まず、有村架純と坂口健太郎の4度目の共演というのが話題となった。
「いつ恋」「ナラタージュ」「そして、生きる」に続いて4作目の共演となる。
だが、全然二人が良い仲になったという話は聞かない。
(ちなみに「いつ恋」で坂口健太郎は高畑充希と付き合い破局・・・)
それはともかく、、、
岡田恵和による美しくも切ない、純愛ラブストーリーはさすがの出来であった。
ドラマの名手によって全8話のストーリーでこのファンタジーな恋物語を描いたのは正解と言える。2時間程度の尺の映画では、こんな濃い物語は描き切れなかったろうから。
勝気で恋も仕事も積極的な女性、さえ子を有村架純が魅力的に演じている。
彼女が得意?とした伏し目がちで幸薄い耐える女性ではない。
そういった役が多かった彼女だが、ここ数年は様々なタイプの女性を演じている。
今回はルブタンを自分へのご褒美に買うような、常にヒールのついた靴を履いてさっそうと仕事に出る、アクティブで前向きな女性だ。
幸薄い架純ちゃんも好きだが、明るくて強気な架純ちゃんもいい。
さすが「姉ちゃんの恋人」「ひよっこ」で有村架純の魅力を引き出した、岡田恵和だけある。
北海道に住む雄介(生田斗真)とさえ子は結婚を約束した恋人同士だったが、雪山を走るバスが雪崩に巻き込まれ、雄介はさえ子を守り命を落とす。
雄介の心臓は、心臓病を患っていた成瀬の元に届けられ移植手術は成功、そして雄介の心臓を持つ成瀬とさえ子が運命に導かれるように出会い、、、、
というストーリー。
正直こう文字に起こすと、なんだか予定調和的なファンタジックなラブストーリーに見えて、いい大人が見るには気が引けてしまうように思ってしまう。
だが、そこは岡田恵和。そんな安っぽいドラマを作るはずがない。
ご都合主義のように見える展開も、そう感じさせない脚本の力でぐいっと見る者を引きずり込んでいく、そんな力が岡田脚本にはある。
ファンタジーだと思いながらもそれを忘れて見入ってしまう、そのストーリーテリング力にさすがと感服した。
またともすれば湿っぽい展開が多くなるところを、適度にコミカルな演出も交えて緩急をつけるあたりもさすがだ。
脚本力、有村、坂口、生田に加え成瀬の妻・ミキ役の中村ゆりら役者陣の演技力、そして小樽を舞台にした映画に負けない美しい映像で、最近やたら過激な作品が多いNetflixドラマの中でも出色の芸術的作品に仕上がっている。
小樽の街並み、ニセコの雪景色、函館本線のローカルな景色など、「北の国から」を彷彿とさせる北海道の雄大で厳しい自然を描くことで、そこで生きる人々の愛の営みが映える。
最終回は心して見るべきだ。
観ている側は二度、三度と岡田脚本に翻弄させられることになる。
詳しくは描かないがここまでの7話で描かれてきた、さえ子、雄介、成瀬、ミキの4人の心のうちが凝縮されている。だからこそ、胸が締め付けられるような感動を呼ぶ。
また、ミキが電話でさえ子に伝えた言葉に、女性の強さ、そしてやさしさと残酷さを併せ持った激しい感情を見て、心打たれた。
イエローのルノーカングーを運転する中村ゆり。
彼女の演技、架純ちゃんに負けず劣らず素晴らしかった。
心の揺れを時に激しく、時に抑えて、、、絶妙でした。
観る前は切ないラブストーリーを想像して泣く用意をしていたのだが、このドラマはそういった作品ではない。お涙頂戴ではなく、半端ないほどの深い愛を描いた作品だ。
「さよならのつづき」というタイトルは、悲しい別れで終わることなく、残された人たちはずっとその先の人生も、失った人の思い出とともに新しい人生を生きていく、そんな希望を意味したものだと思う。
共演者は、三浦友和、イッセー尾形、宮崎美子、古舘寛治らのベテラン勢、伊藤歩、奥野瑛太ら実力者も名を連ねる。
特に奥野瑛太は柔も剛もきっちり演じることのできる、いい役者で好きだ。
ちょい役ではこの秋のNHKの名作ドラマ「3000万」で闇バイトの犯罪者を印象的に演じた、木原勝利が出ていた。彼も今後楽しみな役者だ。
最終回でハワイのコーヒー農園にやってきた有村架純がとてもいい。
古いダッジ・ラムを颯爽と運転する明るいブラウンの髪の架純ちゃん、かっこいい。
もちろん、作中のオシャレな衣装に身をまといヒールで颯爽と歩く架純ちゃんも〇です。
黒髪でない架純ちゃんは、ビリギャル以来・・・・?そんなことはないか。
最後に謎な設定について。
成瀬とさえ子は小樽にそれぞれ職場があるが、成瀬の住まいはニセコ、一方のさえ子は蘭越という小樽からかなり離れた小さな町。
ジョルダンで調べたら2時間もかかる。ネットでもこんな遠くから小樽に通わないだろうと。
多分、だが運行本数の少ない函館本線の車両で、二人が一緒になる機会を多く作るにはりんご農家の成瀬の居住地よりさえ子が遠くに住まないとその機会が少なくなる、ということでこんな設定になったのか。
本当のところはどうなのだろう?