長い映画視聴の経験から、シーズン2以降の作品がシーズン1を上回るできのドラマ・映画はそんなにないと思っている。

だからこそ、シーズン2が前作より面白かったらすごく得した気分になる。

本作はまさにそんな数少ない当たり映画のひとつだ。

 

前作よりスタッフは同じで、ちさと(高石あかり)とまひろ(伊澤彩織)のゆる~い殺し屋っぷりが、更にパワーアップして描かれる。

 

先日も書いた通り、この映画の魅力はゆるさとハードボイルドの絶妙なバランス感覚だ。

監督の阪元裕吾のセンスがとびっきりいい。

脚本、演出もさることながら、カメラワークも玄人好みするカットが多く、映画をわかっていて技術も高いということがわかる。

 

1よりもゆるい日常もハードな殺し屋稼業もともに見ごたえあるエピソードが目白押し。

殺しのシーンをカットして観たら、二人の若い女の子が生活に窮しながらゆる~く日々奮闘する物語。しかしいったん殺しのシーンに切り替わると、派手で本格的なアクションが楽しめる。

 

今作では特に田坂さん(水石亜飛夢)、須佐野(ラバーガール・飛永翼)、宮内(中井友望)の3人のスタッフとのやり取りが面白い。

会話だけ聞くとどこかの会社のお仕事の話だが、その内容は殺しにかかわることであり、彼らとの何気ない会話の妙こそが真骨頂である。

田坂さんの長くくどい説教をウザがるちさととまひろは、誰しもがどこかのバイト先で経験するだろうし、宮内のようなギャルの存在も日常だ。

 

雇われ先の協会から謹慎処分をくらい、金に困った二人が行くバイト先の渡辺哲とのやり取りも最高である。着ぐるみでの喧嘩、渡辺哲の「花束みたいな恋をした」のレビュー(阪本監督はこの映画が好きらしいので、結構真面目にレビューされている)とか、本編にまったく関係ないけど、殺伐としたストーリーにならない工夫がされている。

 

二人のアルバイト殺し屋の兄ゆうり(丞威)と弟のまこと(濱田龍臣)の二人が、ちさととまひろを狙い、両者の間で繰り広げられる壮絶な殺し合いがストーリーの主軸。

そして激しい戦いの中で4人の間に奇妙な友情が芽生えていく。

ラストシーンではまひろとゆうりによる激しいアクションシーンが繰り広げられ、最後はまひろが勝利。戦いを終えて4人はひざを交え、お互いを称えつつゆるい会話でもりあがる。

 

伊澤彩織のキレのあるアクションも健在。

園田健介のアクション指導もいいんだろうけど、彼女のアクションはほんとすごい。

別のドラマ・映画でも見てみたい。

 

「いつか北海道に行きたいな」

「その時は赤木さんも一緒だな」と先に殺された同僚の赤木の名前を口にする二人。

このセリフが二人が覚悟した運命を語っていた。

目と目を合わせてから、無表情のまま二人を射殺するちさととまひろ。

ゆるい世界感でありながら、どこまでもハードボイルドな本作らしい最後だ。

 

だが、エンドロールが終わったあとに数分差し込まれる、ちさととまひろのゆるい日常こそがこの作品らしさかもしれない。

非情に人を殺していく二人の殺伐とした日常に、ゆるさを加え緩和する。

やはりこの絶妙さが、「ベイビーわるきゅーれ」の麻薬性をはらんでいる。

 

今回の作品では殺し屋協会の正規従業員であるちさととまひろ、協会の下請けであるゆうりとまことという、4人の立場の違いも描かれた。

また若い女性が独り立ちして生計を立てる難しさは、シーズン1から引き継いだものだ。

殺し屋ドラマの形を借りて、現代の若者が直面している現実を鋭く抉り出している。

決して交わらなかった二組の若者たちが出会って迎えた悲しい結末。

シーズン1よりも、ストーリーに深みが出ていた。

 

来週末には「ベイビーわるきゅ~れ ナイスデイズ」が公開される。

なんと最強の殺し屋役に池松壮亮が。彼といえば「MOZU」で悲しい過去を背負った殺し屋役が印象的で、アクションも演技も最高の役者が出るというだけで、テンションがあがる。

インターパークのMOVIXで上映されるので、久しぶりに映画を観に行こうかな。。。

 

今回の映画で注目したのは宮内役の中井友望。

小気味よいセリフ回しがよかった。大手テンカラット所属の24歳。今後の活躍に期待。

 

中井友望。短い出番ながらも光るものあり。