医療ドラマでも、精神医療をメインテーマに据えたドラマはなかなか見当たらない。

こういったテーマにスポットライトを当てるのは、さすがNHKである。

期待した通り、見ごたえある作品だった。

 

中村倫也が主人公である精神科医の弱井幸之助を演じている。

彼の落ち着いた優しい声と、森の奥にある静寂をたたえた湖のような雰囲気は、精神科医にぴったりだ。

看護師に土屋太鳳。静と動をはっきりと演じられる実力ある女優さん。

ともにNHKが好むタイプの俳優さんを据えて、ゲストもまたしかり、NHK御用達ともいえる実力はの役者がそろった。

レギュラーには三浦貴大(あんまり出番ないけど)、酒井若菜、竹財輝之助ら。

 

原作、脚本、演出+確かな役者陣でたった3話のドラマだったが、濃厚で充実した内容を楽しめる。

 

1話は夏帆が主演。パニック症候群を患うシングルマザーの役。もはや彼女にできない役はないのでは、と思えるほどの熱演に感動。

余貴美子、梅舟惟永らが共演。

夏帆。母親役も自然にこなす。

 

2話は双極性障害を発症してしまうラーメン屋主人を演じる松浦慎一郎と、彼を支える妹役の土村芳の兄弟愛が泣かせるお話。

河相我聞に佐戸井けん太、小林薫らベテラン俳優が脇を固める。

 

土村芳。どんな役でもきめ繊細な演技ができるのが彼女の持ち味。

 

3話はパーソナリティ症に苦しむ女性に白石聖。感情表現が難しい役どころを演じ切った、彼女の演技力の高さが光る一品。

光石研、中島ひろ子、細田佳央太が共演。

 

白石聖。難しい役も難なくこなす彼女。

「何曜日に生まれたの」でのアガサ役にも通じる今回の演技は見どころ。

 

日本ではようやく、「精神病患者」という差別的な呼称が使われなくなった程度で、いまだに世間では精神を病むことに対する理解が薄いと感じる。

 

精神的に参った人のことを「気の毒に」と思い、「気持ちが弱い」と同情する。

だが、人間である以上常に強く生きることは難しいし、悩みを通り越して病んでしまうこともあろう。

また心の病もフィジカルな病同様に、様々な種類があるがそれらの理解もまだまだと感じる。

 

ただ、こういったドラマがきちんと作られ放映されるようになってきたというのは、日本人の心の根底に流れる「我慢こそ美徳」という精神が、良いこともあれば悪いことだってあるということに日本人自信が気づき始めたからだろうか。

 

3話で終わってしまうのが惜しい。せめて(MATTの中では)医療ドラマの最高峰である「透明なゆりかご」くらいの話数は欲しかったなあ。。。。。