全編を通して(大げさかもしれないが)笑う人が一人も出てこない、重苦しい空気に満ち溢れたドラマ。一言でまとめるとそんな作品だ。

 

そもそも設定に明るい要素が何もない。

人里離れた屋敷に暮らす顔にあざのある謎の男と、彼と一緒に生活する子供たち。

子供たちはみな、親に虐待されたりネグレクトを受けた子ばかり。

そしてある日、その子たちが13人も何者かに虐殺される事件が発生する。

その背後にある、どす黒く深い沼のような闇と謎。。。。。。

 

正直言って一気見するとかなり精神的に疲れるのではなかろうか。

MATTはアンブロックテックで4回ほどに分けて観たのだがそれでも疲れた。

 

主演の冴木を演じる成田凌はそれほど思い入れのある俳優さんではないものの、こういった陰のある役を演じたらこの年齢ではトップだろう。

黒木メイサが久しぶりにドラマに復帰。やや演技が平板なところもあるけど、彼女の持つエキゾチックな雰囲気は、今後もいろいろなドラマ・映画で重宝されるに違いない。

 

そして本作品では蓮水花音役の吉川愛が非常にいいと思った。

ミステリアスな美少女、という枠では彼女の大きく潤んだ目、意思の強そうな唇など良い効果を出していると思う。作中で旅館に泊まる際に期せずして冴木と同じ部屋になってしまった時の吉川愛が、とてもキュートで魅惑的な雰囲気を醸し出し、蓮水花音という謎多き少女の魅力を際立たせていた。

 

吉川愛。演技もさることながら、健康的にムチムチしているところも良いです。。。

 

物語は2部構成となっており、7話でいったん13人の子供殺しの真犯人が明らかになる(意外な人物が犯人だった)のだが、その後、更に真の真相に結びつく事件が起きて物語は混とんとした様相を呈していく。

このあたりの作りは非常によくできていて、7年前の13人の子供殺しの事件と現在を行き来しながら伏線も巧みに回収し、複雑な構成ながらも視聴者を混乱させず飽きさせない。

 

物語の重要な中心人物である灰川十三には小日向文世。いつもサングラスをしていてほとんどタモさんにしか見えないのだが(笑)、彼が行ったことの功罪は今回の事件の影響と巻き込まれた人たちのことを考えると罪の方が大きいのかもしれない。

 

物語の大きなテーマに児童虐待がある。

虐待や暴力を受けた子供たちは、自らも自分の子供に対して同じ行為に及んでしまうことが多い。この苦しみの連鎖を断ち切らない限り真の幸せは訪れない。

 

タイトルの「降り積もれ孤独な死よ」には、そういった声も上げられず人生のどん底に落ちていき、無念の死を遂げた多くの人たちに向けられているのだろうか。

 

共演に、野間口徹、山下美月、萩原利久、仙道敦子、駿河太郎、吉村界人、不破万作、酒井敏也、長谷川朝晴、西原亜希、中山忍など。

 

萩原利久と吉川愛は2019年公開の映画「十二人の死にたいこどもたち」で共演していた。

当時ブレーク手前の二人が今では名の通った俳優として共演しているのは嬉しい。

 

「恋せぬふたり」で好演の小島藤子、「ガンニバル」などでも異彩を放つ笠松将、最近魅力に磨きがかかってきた長谷川京子らも好演。

 

事件のあった屋敷があるのが山奥ということもあり、山梨県が舞台となったのもよかったといえよう。常に大都市・東京ばかりではつまらない。地方の風景や文化もドラマでどんどん見せてもらいたいと思う。

 

最終回のラストシーン、墓参りに訪れて偶然再会した冴木と花音の二人が去り際にそっと手をつなぐところで終わる。

事件を通じ数々の危険な状況を乗り越えて、今ではお互いに大切な人を失い悲しみの淵にいる者同士、ゆっくりと心を寄せ合っていくかのようなラストは感動的だが、ちょっと待てよ。

 

ずっと花音に寄り添い命を賭してでも彼女を守ってきた瀬川涼(笠松蔣)はどうなるの、、、、とちょいとモヤってしまったMATTだった。。。。

 

それはともかく、全体的に救いようのない重苦しさはあるものの謎解きとしては楽しめる、よい作品だった。