今年2月~4月放映のドラマだったが、アンブロックでは8話までしかupされず、9話がupされたのが6月か7月頃、あと一話というところで配信がストップ(寸止め・・・)。

 

しかし、かみさんが「NHK4Kで再放送やっているよ」と教えてくれて、今日ようやく観ることができたので無事ブログに書くことができる。。。

 

時間が経ってしまったので、だいぶ忘れてしまっているが、今日9,10話を連続で見て感動がよみがえってきた。まだあと4か月ほどあるが、今年これまで観たドラマでMATTの中では2024年ベストドラマである。

 

三浦しをんの原作が素晴らしいからだろう。また2013年の映画版は数々の賞を獲っている。「茜色に焼かれる」などの石井裕也監督、松田龍平、宮崎あおい主演。NHK版と違い、馬締光也と香具矢が主人公のようだ。NETFLIXかアマプラにあったと思うので、見てみるつもり。

 

主人公・岸辺みどり役に池田エライザ。最近の彼女の女優としての成長ぶりは目覚ましい。今回も彼女をキャスティングしたNHKの慧眼に敬意を表したい。それほど彼女の演じた岸辺みどりは魅力的なキャラだった。

 

池田エライザ演じるみどりはファッション誌の読モ出身という設定なので、毎回おしゃれな衣装が楽しめる。

「くるり」のめるるもそうだったが、さすがモデル出身だけに着こなしが素晴らしい。

 

舞台は出版社の辞書編集部。ファッション誌で編集者をしていたみどりは、ある日まったく縁のなかった辞書編集部に異動を命じられる。事実上の左遷だったが、やがてその運命を受け入れて、辞書編集の世界にどっぷりハマっていく。

 

タイトルは、「言葉の大海原で迷わないように、辞書という舟を作り大航海に乗り出す」という、辞書を舟に見立てて「言葉」を大切にする人たちの熱い想いが込められている。

とにかく、舞台になる玄武書房・編集部の面々の「言葉」への情熱に圧倒される。

その熱い想いに毎度感心させられ、つい辞書を引きたくなってしまう。

 

前半はみどりが徐々に辞書の世界に引き込まれていく過程が描かれていく。

その中で出色なのは4話、肥後克広演じる挿絵画家のエピソード。

イラストレータを目指す彼の息子にとっては、自分の仕事にこだわりを持たない職業イラストレータだと軽蔑していた父親は、実は息子のことを誰よりも愛していた、というのをみどりによって明かされる。明かされた事実が涙を誘う、とても良いお話。

 

荒木(岩松了)のエピソードも味わい深い。

彼の辞書に対する愛情が、まっすぐで深いことに感銘を受ける。

みどりとの歳の差・性別を越えた友情も美しい。

 

そのほかにもみどりの母親・森口瑤子とのエピソードも泣かせる。

言葉の意味の取り違いが、親子の溝を拡げていたという話も心に残るエピソード。

 

「言葉」の持つ、人の心を動かしたり、救ったり、寄り添ったりという力を、NHKらしい安定感のある役者陣の演技で上質のドラマに仕立てている。

ひとつひとつのセリフ、エピソードがいちいち心に刺さってくる。

 

もうひとつ、このドラマを深いものにしているのが登場人物が皆、自分の仕事を愛する「プロフェッショナル」であること。

「言葉オタク」の編集部主任の馬締光也(野田洋次郎)は言うまでもなく、日本語学者の松本教授(柴田恭兵)、彼と長年辞書編纂に携わってきた辞書をこよなく愛する荒木、厳しい経営哲学を持つ玄武書房社長の五十嵐(堤真一)、元編集部員で有能な営業の西岡(向井理)、上質な紙を作ることに情熱を傾ける製紙企業の宮本(矢本悠馬)、一切の妥協を許さないブックデザイナーのハルガスミ(柄本時生)、光也の妻で料理人の香具矢(美村里江)は、光也との生活より料理人としての自分を選び、一人京都に旅立つ。

 

自分の仕事に真剣に向き合い、時に近視眼的になりながらも決して諦めない彼らの姿が観る者を感動させる。

そして自分に自信を持てず、すぐに「わたしなんて」と自分を卑下するばかりだったみどりも、彼らに背中を押されて、少しずつ「プロ」としての道を歩んでいく。

 

9話はそれまでの伏線が色々と回収されて、宮本がみどりに愛の告白をする感動のお話でこれもまた泣かせる。

 

お互いを思いやる気持ちに涙しました。。。。絵も綺麗だった。

 

10話では辞書が完成するのだが、これまでの様々なエピソードが走馬灯のように流れ、万感の想いで登場人物に同化してしまう錯覚に。

 

その他共演者も実力者ぞろいで物語に厚みを持たせるのに十分すぎるキャスト。

前田旺志郎、渡辺真起子、鷲尾真知子、勝村政信、金澤美穂、野呂佳代らに加え、ゲストに戸塚純喜(虎に翼に出演中)、草村礼子、村川絵梨ら。

また、映画版馬締光也を演じた松田龍平が8話で登場し、野田洋次郎の馬締と相対するという心憎い演出も。

 

10のエピソードがそれぞれ際立って素晴らしく、一気見したくなる良作。

何度も見返したくなる作品はそうそうない。

池田エライザの代表作にしてもよい、秀作でした。

映画版も絶対見よっと。