昭和の映画を観たくなり、Netflixのマイリストに貯めていた中からチョイス。
高倉健がギャラを半分にされても脚本が面白いからと、犯人役での出演を決めたという逸話もあるそうで、健さんはじめ当時の銀幕スターが一挙出演するという、製作費5億円超の東映の意欲作。
公開当時の1975年は戦後30年、高度経済成長真っただ中の日本。
組合問題、過激派によるテロ、貧富の差、沖縄返還・・・。混とんとした時代だった。
また映画の世界では、MATTも大好きな「タワーリング・インフェルノ」などのパニックものが世界的に流行していた時代。
2時間半の超大作で、全編当然のように新幹線が出てくるわけだが、当時の国鉄の協力が得られなかったこともあり、多くはセット撮影だったというから大変だったろう。
高倉健演じる沖田と2人の仲間が新幹線に爆弾を仕掛け、国鉄に犯行声明を伝えることで物語は動き出す。爆弾には速度80km/hを下回ると爆発する仕掛けが仕込まれていて、東京を出発したひかり109号とその乗客は危機的状況に追い込まれていく。
タイトルのイメージからは新幹線と集中管制室の緊迫した状況中心の映像になるかと思いきや、結構な割合で新幹線「外」で話が進む。
運転士役のサニー千葉こと千葉真一は、持ち前のアクションを駆使するシーンはほとんどない。(なぜ千葉真一だったのだろう、、、、 ちなみに副運転士は小林稔二)。
それもそのはずで、本作はパニック映画として作られた一方で、当時の戦後混とんとした日本の社会の歪や人々の鬱積した感情、声なき叫びにも焦点を置いていたからにほかならない。
もっと暴走する新幹線をどう停めるのか、というところに焦点を絞って撮れば迫力あるシーンも相まって純粋に楽しめる大作になったと思うのだが、沖田やその仲間の古賀、大城浩といった若者たちのような、急速に発展する日本社会の陰で虐げられていった名もない人たちの人生を結構丁寧に描いており、どうも新幹線のピンチがぼやけてしまう。
まあ、大作映画というのは古今東西、賛否両論あるもので、Gメンシリーズ、キイハンター、人間の証明、野生の証明などを撮った名監督の佐藤純弥による映画作品としての出来はすこぶるいい。カット割り、カメラワークなどはダイナミックかつ繊細で、玄人好みする。
現在ベテラン、もしくはもう鬼籍に入ってしまった名優たちの若いころのフレッシュな演技が見られるのもよいところ。
「スピード」など海外のパニック映画にも影響を及ぼした名作として、一見の価値はある。
開業10年の新幹線が当時どれだけ日本人に愛されていたか、またその世界最先端のテクノロジーを過信することは禁物で最後は人間が正しい判断を下さないと、人の命は守れないといったことを描いているのが興味深い。
それは今の時代にも通じるものであり、人間にとって大切なことは過去も昔もさほど変わらないものだ、と知るよいきっかけにもなった。
やっぱ、昭和世代には新幹線は0系だなあ。。。。懐かしい。