Season1&2に続き、それぞれの映画版も一気見だ。
映画版はドラマ版では描かれなかったマドンナ、御園先生(武田玲奈)、宗方先生(土村芳)との恋バナも差し込まれる。
純粋に本作品のテーマである「給食道」だけ描けばいいじゃないかという声もあるだろうが、そんな固いこと言うのは無粋というもの。
マドンナとの恋バナをさしはさむことで、甘利田という変人も実は一人の男であるということを認識させることができ、彼の人物像を掘り下げるのに役立っている。
すなわち、それはビールちょっぴりやウイスキーボンボンで酔っ払い、女性に本音を漏らしてしまうという彼の正直さと危うさ、などの発見だ。
武田玲奈のキュートな魅力もよし。
土村芳のしっとりした大人の魅力もよし。
ドラマでは表現できなかったこの作品に一貫しているテーマも、映画版を観ることでよく理解できた。
この作品のテーマはタイトル通り「おいしい給食」である。
それは非常にシンプルなメッセージだ。
豊かな食文化が誇りである我が国、日本。それを支えているのは「食育」を通じて、美味しいものを美味しくいただくという「給食」というシステムであると思う。
そしてもうひとつ、映画版で伝わってきたメッセージは、「大人の論理が子供にとって最良ではない」ということ。
大人が良かれと思ってあれこれ考えることは、時にシンプルさを欠いて物事を複雑化する。そしていつの間にか物事の本質を見失ってしまう。
神野ゴウは、シンプルに「おいしい給食」を愛し楽しんでいる。そしてそれは大人である甘利田も同じだ。そこに子供も大人もない。
シンプルに本質を追い求める甘利田は、つねに真実に目を向けている、正しい人間であり教師なのだ。
この作品はそんな小難しい解釈などなくとも、給食を美味しく食べることに奔走する二人の「給食バカ」を楽しめばよいが、実は深いテーマもはらんでいるところが本作をただのコメディで終わらせない要因なのだと感じた。
Season2から甘利田を目の上のたんこぶのように扱い、排除しようとする教育委員会の嫌味な委員・鏑木に、直江喜一。
あの名作・金八先生で「くさったミカン」の加藤を演じた彼である。
鋭い眼光と斜に構えた物言いはあの頃のまま。
そして体制や権力に抗っていた野犬のような生徒が、この作品ではまさに体制側にいる、というのも配役の妙で興味深い。
直江喜一の名演が、甘利田との対決をよりスリリングなものにしており作品を盛り上げている。
給食センターの職員に元NHKアナウンサーでマロこと登坂淳一が出演。
彼のことは髪が黒かった若いころから知っているので、なかなかの好演に驚きを禁じ得なかった。
ちなみに給食センターといえば、給食のおばちゃん役のいとうまい子は、映画版でようやくマスクを外す。まさか「幸色のワンルーム」での上杉柊平見たく、最後までマスク外さないのかとドキドキして見ていたのだ。。。。ww
給食制度の廃止、給食のヘルシー化など、鏑木が仕掛ける様々な難題に対し、甘利田も神野も必死に抵抗する。
しかし、結局巨大な権力の前に無力な自分たちを思い知ることになる。
ただ熱意だけでは物事は解決しない、世の中はそんなに甘くないということをしっかりと描いているあたりが好感持てる。甘利田などはそのたびに現職を追われ、異動させられるからだ。
でもそんな無常を味わっても、信じる道をシンプルに突き進むことの大切さをこのドラマは提示してくれる。
いつも給食バトルに負けてばかりで甘利田は生徒である神野にむしろ色々と教えてもらっていて情けない、、、と思っていた。
しかし映画版「卒業」のラストシーンで神野は将来の進路を教師だけでなく、教育委員会だと告白する。教育委員会に入り給食をより良いものにするのだ、と。
甘利田は教師として、信じる道をつき進むという大切なことを神野に教えていた。
彼は真の教師だったのだ。
Season3が昨年放映され映画版も5月に公開された。
舞台は函館、マドンナは大原優乃らしいので観てみたい。
神野ゴウ役の佐藤大志。
彼の嫌味の無いキラキラした笑顔が、このドラマには欠かせない。