監督の大根仁といえば、なんといっても「TRICK」だ。
おどろおどろしい描写と阿部寛・仲間由紀恵らのコミカルな演出がマッチして、独特の世界観を作り上げていたが、今回のドラマのような残酷・スプラッター描写を撮るとは、思いもよらなかった。
原作がおそらくよくできているのだと思うが、全7話がコンパクトにまとまっていてドラマとしても最後まで息つく間もなく、楽しめる一品。
プロットはテンポよく、癖のある役者陣と切れのいい演出であっという間に7話が終わってしまった。豊川悦司演じる情け容赦ない地面師のハリソン山中のキャラが立ちすぎていて、地面師ドラマ路線をかなり逸脱している、すなわち出来のいいマーダーサスペンスに見えてしまうのは誤算だったろうか。
2017年の積水ハウスの地面師詐欺事件がモデルで、リアリティとエンタテインメントのバランスがよく取れているうえに、豊川悦司が何とも不気味でサイコパスの快楽殺人者、というのが心憎い。彼の凄みはなかなか余人に代えがたいレベルで、続編も観たくなった。
また共演の綾野剛も彼の持ち味である、何を考えているかわからない雰囲気を持ちつつ人の良さも見せる人間的な演技がこれまた魅力的。
脇を固める俳優陣もドラマを引き立てる。
地面師仲間の北村一輝、ピエール瀧、小池栄子と完璧すぎるキャスト。
騙される不動産業者も駿河太郎に山本耕史と秀逸。
更に彼らを追う刑事役にリリー・フランキー、池田エライザとナイスキャスティングだ。
また、松尾諭、岩谷健司、谷川昭一郎、マキタスポーツ、染谷将太、松岡依都美(いい塩梅にエロくて良い)と実力派が名を連ねる。
特に、吉村界人のホスト役はよくぞここまでという名演技。彼はもっといい役をもらってもよい実力ある役者だと思う。
ハリソンの快楽殺人者っぷりは格別に気持ち悪くへどが出るほどで、見ているのが辛くなる。特に竹下(北村一輝)をなぶり殺しにするシーン、靴で竹下の頭を何度も踏みつぶすところで、何やら嫌な音(ぶじゅる、、、、とかいう。。。)がやたら気持ち悪く、ここまでするかと。その竹下がホストの楓(吉村界人)を刺し殺すシーンも、かなり、、、である。
そんなシーンが目白押しだが、地面師たちが不動産業者を欺くまでのプロセスは丁寧に描かれており、犯罪者なのについ「ばれるな。。。」と応援してしまう反社会的な自分がいた。
またハリソン山中がドラマの中で語る「ダイ・ハード」で強盗グループのリーダー・ハンスを演じるアラン・リックマンの落下シーン、打ち合わせより早めに突き落とした結果、リアルな表情が撮れたという有名な話を持ち出し、その通りに刑事の下村(リリー・フランキー)を突き落とすシーンは、映画ファンにはたまらないオマージュだった。
日本の土地、特に東京の土地は複雑に抵当権が設定されていたり、所有者が行方不明になっていたりとずいぶんと闇が深いという話はよく聞く。
思えば太平洋戦争で焦土と化した東京は、その時に様々な怪しい人たちが暗躍して、土地の権利関係が複雑化してしまったのだろう。
今の法律が存在する限り、国の超法規的措置で区画整理したり再開発したりはできない。
そんな状況が地面師たちにとって格好の漁場を作り出しているのかもしれない。
最期に、このドラマでうれしかったことは、推し女優の池田エライザが刑事役をやったことだ。登場してすぐは頼りない新人刑事の雰囲気だったが、ラスト間際ではかっこよく活躍してくれた。ぜひ、次回作も刑事で出てもらいたいし、これからもかっこいい池田エライザでいてもらいたい。
「刑事7人」は倉科カナが出ていたシリーズまではよかった。
もし将来また刑事ドラマをやるなら、女性刑事に彼女をぜひ。。。