最初、時間の無い時に気軽に見るドラマにと何の気なしに見始めたが、意外によくできたドラマでお気に入りとなってしまった。
「孤独のグルメ」以降、あまた作られた「飯テロドラマ」の流れで、テレ東制作かと思いきや、製作は関西ローカルの毎日放送だった。
主演はマジ―こと眞島秀和(山形県米沢市出身)。
撮影はJR東日本協力のもと、動かないE5系で撮影されたとか(撮影に使われたのは初めてだそう)。
「孤独のグルメ」の主人公・井之頭五郎は独身、古美術商、変人とキャラが立っているが、眞島秀和演じる主人公・高宮進はごくごく平凡なサラリーマン。
美人妻(星野真里、友情出演なので全然姿を見せない・・・)や可愛い2人の娘もいるという幸せな中年男。性格は奥手な普通のおじさんだ。
そんな彼が唯一変態的な性癖を見せるのが、「居酒屋新幹線」と自称している出張帰りの新幹線の中で開くささやかな宴。
なぜ変態的かというと、いわゆるサラリーマンのオッサンの出張帰りの新幹線で一杯、を本格的な飲みの場に仕立て上げるために全精力をつぎ込んでいるところだ。
仕事が終わると帰りの新幹線の時間まで、その土地の旨い名産品や地酒を血眼になって探す。その粘着質ともいえる行動は普段の彼からは想像できない。
そして新幹線なのにナイフ・フォークはおろか、お皿や小鉢、ワイングラスや切子などの食器類をすべて七つ道具よろしく鞄に忍ばせて、新幹線に乗ったらそれらを広げて買ったものを並べて食すのだ。
シーズン1は12話あるが、平凡で何の趣味も持たなかった彼が、居酒屋新幹線を始めたきっかけのエピソードや、エピソードが進むにつれて眞島秀和演じる高宮のキャラがどんどん変わっていく(壊れていく・・・?笑)などの変化も楽しめる。
そして何よりこのドラマの素晴らしいのは紹介されるお酒や食べ物が、決して派手ではないが丹精込めて作り上げられたブランドの数々であり、作り手の方たちの想いがきっちり紹介されている点であろう。
シーズン1は東北新幹線が舞台で東北のグルメが紹介されているが、失礼ながらそれまで東北には仙台など一部の大きな街を除いてそんなに美味しいものはないのでは、と思っていた。
しかしこのドラマで己の無知を恥じた次第だ。
出てくるお酒、食べ物がどれも本当に美味しそうで、毎回悶絶しながら観ていた。
そんな美味しそうな数々の品を、これまた愛おしく食す眞島秀和の演技も素晴らしい。
エピソードを重ねるにつれ、顔芸が複雑化していくのは「孤独のグルメ」と似ていて面白い。
シーズン2もあるのでぜひ観ようと思う。
共演者はそれほど多くない。
各話のゲストに、新山千春(福島出身)、大石吾郎、水間ロン、坂井真紀、モロ師岡(彼がこのドラマのキーマン)、田中要次などいい役者が名を連ねる。
JRが国鉄だったその昔、1970年から始めたキャンペーンが「ディスカバー・ジャパン」だった。あれから50年。その後の円高などもあり、日本人はみんなこぞって海外旅行に行くようになったが、じつは日本の隅々まで行ったことがある日本人はそういないはず(どこの国でもそうだと思う)。
まだまだ知らない日本があり、その豊かな食文化が世界でも随一であることをもっと我々日本人は知るべきだと思う。
そんな壮大なことに思いを馳せてしまうのも、このドラマが提示している数々の日本の食文化が素晴らしいからにほかならない。
日本人に生まれて良かった、、、と思う瞬間だ。
高宮進はノンベエだが甘いものも好きで、必ずデザートを用意する。
宇都宮駅編では、高林堂の「燻×羹(くんばいかん)」が紹介されていた。
高林堂といえば「かりまん」が有名だが、これは食べたことがない。
今度買って来よう。。。。