高橋一生のブラック・ジャックは悪くないと思った。

 

小学生高学年の時に急性腎炎を患って3カ月ほど入院した。

小児病棟の一室は8人部屋で、入院している間は比較的軽度の病の子たち(扁桃腺炎など)が入れ代わり立ち代わり。

 

その中の一人の女の子が貸してくれた漫画がブラック・ジャックだった。

それまで少年ジャンプの漫画しか読んだことがなかったMATT少年にとって、それは衝撃的な出会いであった。

「ハッピーエンドの話がほとんどない。。。。。」

 

世の中の不条理の数々と、アンチヒーローな主人公。

入院中だったこともあり、医療や人の命についても考えが及び、それから40年あまり経った今も、MATTの中ではNo1の漫画作品である。

 

秋田書店版のコミック全巻(何度も読み返してボロボロだが)はもとより、大学生の頃に国会図書館に通い詰めて、単行本未収録の話をすべてコピーして今でも持っている。

それほどに好きな漫画なのだ。

 

さて、過去にも何度も映像化された本作。そのすべては成功だったと言えない。

いや、むしろほとんどが・・・・・である。

 

今回の2時間スペシャルドラマはどうだったろう。

森下桂子の脚本ということで期待をして観たが、原作の世界観や価値観を大切にして作られたことは感じられた。

MATTのようなコアなファンにとっても、まずまず文句なく観ることができたのではないだろうか。

 

原作の様々なエピソードを巧みにつなぎ合わせて作られたストーリーは、ファンにとってはああ、このお話ね、、、、と思い出しながら楽しめる作りになっている。

 

高橋一生のブラック・ジャックのキャラ作りは完璧だったろう。

「おまえさん」という定番のセリフも違和感なし。

ぶっきらぼうだがコミカルな側面も持ち合わせる原作のキャラ設定を忠実に再現できていた。

 

ピノコ役は「ブラッシュアップライフ」で注目された永尾柚乃。「あっちょんぶりけ」も完璧ですばらしい。

 

ドクターキリコを石橋静河が演じてまさかの「女性」になってしまっていたのは飛び道具かと思いきや、松本まりか演じる獅子面病患者の女性とのやり取りを見て、このストーリーならキリコが女性でないと、成立しないかなとも思う。

だから、このスペシャルドラマ限定であれば女性版キリコもありだ。

 

共演は井之脇海ほか、宇野祥平、山中崇、奥田瑛士、橋爪功ら。

 

長期連載の原作はそれこそ珠玉のお話が多数あるので、今回のようなアプローチ=異なるエピソードの集合体としてドラマ化する、というのは新鮮だったし作り手のこだわりを感じることができた。

 

ちなみに作中、宇野祥平と松本まりかの夫婦が乗っていた車が、シボレー・モンテカルロの最終型だった。アメリカでは人気のあった車種だが、日本ではマニアックな車なのでどうしてこの車を選んだのかドラマ制作者に聞いてみたい。

 

劇中使用車はこれのブルー。個人的には好きなアメ車でした。