6年も前のドラマなのだけど、ジャンルとしては今流行りの「お仕事もの」にあたる。
漫画原作者の柏木ハルコがドラマ制作にあたって、「間違った情報を描かないよう監修をつけてほしい」「視聴者の偏見を助長するような表現はしないでほしい」という2点をドラマ制作オファーの条件にしたという。
こういった原作者の強い意思と、製作者(関テレ)の信頼関係が良いドラマを生んだ。
生活保護受給者の様々な姿を、ある役所の生活課に勤める新人ケースワーカーの目を通して描いていくお話。
主人公の義経えみるに吉岡里帆。
同僚に、井浦新、川栄李奈、山田裕貴、水上京香ら。上司に田中圭。
主要キャストに生活保護受給者で後に自立するサラリーマン阿久沢に遠藤憲一、その娘・麻里に阿部純子。阿久沢のバイト先の定食屋の店主・青柳円に徳永えり。
なかなか個性的な俳優陣がそろっているせいか、話自体しっかりしているのに加え俳優陣の演技も安定していて見ごたえあった。
原作者の想いと制作側の想いがしっかりかみ合ったおかげで、情に流されたり予定調和的にならない、硬派で骨のあるドラマに仕上がっている。
お仕事もののドラマは、こうでなくてはという作りだ。
全10話だが、特に印象深いお話がいくつかあった。
CASE4の安達祐実演じるシングルマザーと、山田裕貴演じる七条の物語りは若い男性ケースワーカーが、女性、そして母親の本当の気持ちに寄り添えなかったことに気づき成長する物語。同情や支援より共感、寄り添うことの大切さを知ることになる。
CASE7の池田鉄洋演じる識字障害の男性と、川栄李奈演じる栗橋のお話も感動する一品。ここでも池田演じる男性に寄り添えなかった川栄の心の成長が見られる。
誰にも分ってもらえず一人で苦しむ人たちを救うことの難しさがそこにはあった。
川栄李奈。彼女の演技は好きです。
ナチュラルさと感情表現の豊かさが素晴らしい。
そしてCASE9・10の松本まりかは育児放棄するだらしないシングルマザーを演じた。実は自らも児童養護施設育ちの恵まれない境遇だったのだが、そのために子供にも同じことをしてしまい、苦しむ女性を熱演。彼女の熱量をしっかり受け止めた吉岡里帆も素晴らしかった。
最終話にふさわしい、感動の作品。
松本まりかが本当に素晴らしかった。
自分の中にある辛い過去に打ち勝って、娘を想う姿に感動。
お話自体も粒ぞろいだったが、役者さんもつぶぞろい。
中でも遠藤憲一、井浦新の俳優陣は分厚い演技力で女優陣をしっかりと支えている。
井浦新、遠藤憲一。二人の人間味あふれる演技にほっこりさせられる。
ゲスト陣では、ふせえり、江口のり子らが出演。
「時効警察はじめました」で吉岡里帆と共演しているが、このドラマの方が先だったようだ。
そのほかでは、まだ若かった吉村界人、山下容莉枝、小市慢太郎、嶋田久作、遊井亮子、峯村リエらが出演。
ちょっとびっくりは、CASE7で畑芽育が中学生役でちょい役で出演していた。
吉岡里帆は最近良くなってきた、と勘違いしていた自分が恥ずかしい。
このドラマの頃、すでにとてもいい女優さんだったということを知る。
一時期、「視聴率の取れない女優」のレッテルを貼られて叩かれた時期もあったと記憶するが、そんな声に負けず自分の信じる道を貫いた彼女に拍手を送りたい。
本作を見て、実際の現場がこのドラマのように何とかなるのではない、ということを考えると、日々奔走する現場の方々には敬意を表したいし、本当に生活保護が必要な人たちに支援の手が届くことを願ってやまない。