これ、ずっと見たかったドラマだった。
unblockに無い、と思っていたらあったのだ。
なぜ今まで探せなかったのだろう。。。
あまりに面白いので、あっという間に見終えてしまう。
次の話がどうなっていくの・・・・?と楽しみで仕方ないドラマは久しぶりだ。
原作、脚本、演出、スタッフ、キャスト、、、そして音楽とすべてが完璧だった。
2019年7月のドラマだが、今はやりの「息苦しい現代」を見事に切り取ったはしりの作品かもしれない。
主人公の凪に、黒木華をよくぞ充ててくれたと思う。
原作は読んだことないが、見る限り原作の凪と黒木華は雰囲気が全然違うように思える。
だが、実写ドラマだからこそ、確かな役者に任せるというのは大事なこと。
黒木華が凪を演じたからこそ、名作になったと思う。
黒木華は肩に力が入っていないのに、どっぷりと役になり切ってしまうという実に不思議な役者さん。魅力的だ。
1話目からぐいぐい引き込まれていく。
これでもか、というくらい不幸で不憫な凪をテンポよく描いていくので、観ている方は次の展開が気になり目が離せない。
また、クソがつくほどの嫌味な男の我聞慎二(高橋一生)、ミステリアスな優男のゴン(中村倫也)の二人の描き方も憎い。まんまと視聴者は、その本性が正反対であることを知らされ騙されてしまう。
市川実日子演じる坂本龍子もエッジが効いたキャラで小粒でピリリとくる山椒のよう。
「空気を読んでしまう」凪と慎二、そして空気を読まないゴンと龍子。
この4人を中心に物語は進んでいく。
特に、凪と慎二の間にはお互い「空気を読む」性分から、言いたいことが言えずすれ違いが生じる。その見せ方が実に憎い。ああ、そういうつもりで言ってたのか、と。
このドラマが視聴者の共感を得て人気を博したのは、凪と慎二の生き方が多くの日本人の最大公約数だからだろう。
瀧内公美演じる足立心(このキャラも、さすが瀧内公美)のような人物に、多くの日本人は苦しめられている。
二人が周囲の人たちの助けもあり、お互いの気持ちを知るようになっていくうちに、空気を読んで生きることの苦しさから解放されていく。
良質の恋愛ドラマでありながら、この作品の本当のテーマは「違う自分に変わること」なのだと思う。
劇中でゴンが凪に語るセリフ。
それまで女性に優しくするだけで相手の気持ちはまったく気にも留めなかった男が、凪と出会ったことで本当に人を愛し、大切にする気持ちに気づく。
そして、自分がこんなに変われたのだから、凪も変わることができると伝える。
最終話(当時原作は連載中だったので、ドラマオリジナルらしい)、凪はゴン、慎二の求愛を退けて一人で生きていく決意をする。
今まで空気を読み、自分の母親をはじめ他人の言う通りに生きてきた凪は、自分のやりたいことを自分の意志で見つけ、自由に生きることに喜びを見出した。
脇を固める役者さんたちも素晴らしい。
過呼吸で倒れて会社を辞め、身一つとなって転がり込む安アパートの住人。
ゴン以外には、白石親子。母親に吉田羊、娘に白鳥玉季。
謎多きおばあちゃんの緑に三田佳子。三田演じる緑と、その妹の志乃(鷲尾真知子)の最終話の再会は、短いシーンだが二人のベテラン女優の名演にほろりとさせられる。さすがです。
凪の母親の片平なぎさ、慎二の両親の利重剛、西田尚美らは、子供たちを知らず知らずのうちに苦しめるダメな親を好演。
スナックママにゲイ役で武田真治、慎二の後輩の市川円に唐田えりか(不倫騒動前、、、)、毎回違う役で出演するファーストサマーウイカなど。
ちょい役でも不破万作や森本レオ、そしてゴンの恋の沼にはまってしまう可哀そうな女の子に古川琴音となかなか興味深い。
のほほんとした雰囲気のやけに耳に残るBGMも、ドラマの世界観にぴったり。
10話があっという間に終わってしまうほどの濃厚さ。
もっと観ていたい、というところで終わるのがよいのだろう。
同じスタッフでこの3年後に「妻、小学生になる」が作られて、こちらも名作だ。
またしばらくして見返したくなるだろう、心に残るよいドラマだった。
お勧めの作品である。
モジャモジャの凪も可愛いのだが、ストレートの凪が妙にいい。
黒木華の新たな魅力を知ってしまった。