ユーミンの楽曲をテーマに1話15分x4話のショートストーリーが3話。
第1話は綿矢りさ、第2話は「伊藤くんA to E」などの柚木麻子、第3話は川上弘美が脚本を手掛ける。
サクッと見られて、それでいて考えさせられる内容のドラマはNHKならでは。
古い体質のテレビ局でありながら、実はドラマに関してはNHKの取り組みは毎度進んでいる、と唸らせられる。
第1話「青春のリグレット」
夏帆、金子大地、中島歩、片桐はいり
菓子(夏帆)のように、若かりし頃、鋭いナイフのように周囲の人たちを傷つけてしまった人は少なくはないだろう。MATT自身もそうだったと振り返った。
周りの人間、それが例え身近にいる自分のことを大事に思ってくれている人の言う事にさえ耳を傾けない。結局は自らが聴こうとしなかった声に気づくまで、それは続く。
菓子もある時、ひょんなことから自らを振り返るきっかけに出会う。
人生、一度や二度の失敗はあるだろう。
大事なことは、常に昨日の自分よりも少し良くなってみようとする気持ちであり、生き方だ。
綿矢りさらしい、躓きながらも前を向いて生きていく女性を演じた夏帆がかっこよかった。
第2話「冬の終わり」
麻生久美子、篠原ゆき子、伊東蒼、クリスタル・ケイ、浅田美代子
有線放送のオペレーター役で黒木華が声だけの出演
この話、3話の中では一番好きかも。
篠原ゆき子は大好きな女優さんだ。この人の存在感ある演技はバイプレイヤーとして一流。
変化の無いパートの日常を、スーパーに隣接したフードコートの冬の平日を舞台に描かれる。
他人とまったくコミュニケーションを取ろうとしない新入りのパート・仙川(篠原ゆき子)は、有線で「冬の終わり」がかかった時のみ、饒舌に語りだす。
それに気づいた藤田(麻生久美子)は、なんとか仙川とコミュニケーションをとる糸口を見つけたい、と同僚の協力を得て館内放送でまた同じ曲を流そうと画策し奔走する。
コメディでもあり、ちょっぴりミステリー色もあり、最後まで展開を楽しめる。
柚木麻子の描く女性の世界は、細やかで不確かな感情の動きを絶妙に表現している。
家庭で孤立していた藤田だからこそ、仙川の心の隙間にも気づけたのだろう。
理屈ではなく情感で理解しあえる女の友情も描かれて、見終えたあとのスッキリ感が心地よい。
第3話「春よ、来い」
宮崎あおい、池松壮亮、田中哲司、小野花梨、白鳥玉季、岡山天音、きたろう
出演者は豪華絢爛。
それぞれ実力ある役者が、短い時間の中で人生を演じていて見ごたえ十分。
そんな中、次世代に来るイチオシの白鳥玉季はこれら一流役者の面々に交じって、堂々の演技。あと数年は待たないといけないだろうが、間違いなく一流の仲間入りするだろう女優さん。
小野花梨はここでも演技巧者ぶりを発揮。次の朝ドラヒロインに近い若手の一人。
白鳥玉季。
「いちばんすきな花」でもドロップアウトした少女を演じていた。
アンニュイな雰囲気が、14歳という年齢以上の大人っぽさを感じさせる。
カナコ(宮崎あおい)と、衣笠(池松壮亮)の家に伝わる謎の力「あれ」の正体とは、という謎めいた設定だが、その実態はやがてちょっとした感動を伴い判明する。
しんどいことや辛いことは誰にでもあるだろう。
でも気が付けば、見ず知らずの他人によって救われることもあるかもしれない。
この世知辛く殺伐とした世の中で、そんな希望を少しでも感じさせてくれるお話。
作中使われる小道具の車が凝っていた。
小野花梨と白鳥玉季がドライブする車はフィアット・チンクチェント。
岡山天音と宮崎あおいがキャンプに行くのに乗ったのは、VW ヴァナゴンかな・・・?
良い脚本と良い演者による佳作。これからもこういうの待ってます。