原作はtwitterやpixivで公開されていた作品とのこと。

もはや出版社やTV局に持ち込まなくとも、よい作品は世に出てくる。

いい時代になったということなのか。

 

ジェンダーや同性カップルを主題とした作品は最近多い。

このドラマも比嘉愛未演じる野本さんと、西田恵未演じる春日さんの二人の女性の物語。

ジェンダー+グルメというと「きのう何食べた?」が先駆者だが、あちらが最初からゲイのカップルのお話なのに対し、本作は野本さん自身はシーズン1では性自認があいまいで、自分の性的対象が男性ではなく、女性であることに気づくところで終わる。

 

本作は女性を中心に人気を博したそうだが、観終わって何となく理解できた。

男性社会が作り上げた「女性らしさ」を押し付けられることの苦しさや、不条理を描いているからだ。野本さんも春日さんも家族と言う小さなコミュニティの中でさえ、生きづらさに押しつぶされながら生きて来た。

そんな二人だからこそ、自然と惹かれ合っていったのだ。

 

野本さんは料理が好きだがたくさん食べられないので、ボリュームのある料理を作りたいのに作れないというジレンマを抱えている。

一方で春日さんはたくさん食べるのが大好き。

足りないところを二人ならば補完できる、というのが出会いのきっかけだった。

そこから互いの人間性を認め合い距離が近づいていくのだが、この最初の「足りないところを補い合う関係」というのは、異性だろうが同性だろうがカップルには重要なファクターであろう。

 

重いテーマなのだが、料理、食べるという行為を通して二人の関係性が徐々に近くなっていく過程がとても丁寧に描かれる。

男女の恋愛、結婚が当たり前の世の中において、同性カップルの幸せそうなお話を見せられると、異性婚。同性婚、どちらが本来の姿なのかがわからなくなる。

おそらく、どちらも本来の姿なのかもしれない。

人間含む生物というのは、単純ではないらしい。

 

比嘉愛未の主演ドラマは初めて見たが、野本さんというどこにでもいそうな女性をとても魅力的に演じていて素晴らしいと思った。

徐々に自らの性的志向に向き合っていく過程の心の揺れ動きが実によくわかり、共感できる。

料理好きの設定なので、エプロン姿で楽しそうにキッチンに立つ姿がとても可愛いらしい。こんな奥さんがいたら早く家に帰らなくちゃ、、、と激しく妄想。。。ww

 

エプロン姿が良く似合う、なんて綺麗なのでしょう。。。

 

春日さん役の西田恵未は女優さんが本業ではない。

国立音大卒のバリバリの音楽家なのだ。でも朴訥とした感情の起伏の少ない役柄がピタリとはまっており、よくもまあこういうキャラの人を見つけてくるなと感心。

彼女のにじみ出るような人間的な優しさがあるから、野本さんも惚れるのだなと納得。

 

森田望智は野本さんの同僚の佐山さん役。終盤、野本さんが思い切って自分の性自認について告白した時、「あたしの大学時代の友人がレズビアンだったので、普通じゃないですか」と言ってのけるあたり、最近時の若い人たちにとってはジェンダー問題は身近なモノなのだろうか。そうだとすると、多様性を受け入れる良い時代なのだと思う。

 

行きつけの定食屋は野添義弘と原田千恵子の夫婦役。

野添義弘は「ワカコ酒」でも割烹料理屋の大将役だった。彼はこういった役が良く似合う。

 

野本さんの作る料理は愛情にあふれていて、どれも美味しそうだ。

料理を楽しそうに作る女性は素敵だし、また美味しそうに食べる女性も素敵だ。

 

シーズン1は二人の距離が縮まったところで終わった。

だが、まだ野本さんは春日さんに告白はしていない。

この後どんな展開が待っているのか。

シーズン2を楽しみに観てみよう。