2年前のドラマ放映時は、まだこのブログのスタイルも決まっておらず、とりあえず当時新進気鋭だった門脇麦に注目した記事を書いた。

その後昨年の特別編を経て、ようやく映画版を見ることができた。

 

最近話題の「原作との違い」問題はさておき、原作を読んでいない身としてではあるが菅田将暉の久能整はとても魅力的なキャラであり、彼が俳優としての類まれなる才能を存分に発揮するフォーマットとしては、最高のキャラクターに思える。

 

良い意味で原作とは違う世界観を作ってしまったようで、実写版はもう菅田将暉以外では考えられないのではないだろうか。

 

ストーリーは横溝正史ファンのMATTとしてはすんなりと入っていける内容であったし、随所に横溝作品へのオマージュが感じられて楽しめた。

蓬髪、コミュ障っぽい、見た目で軽んじられるが実は鋭い、など金田一耕助と被って見えてしまうのは、そもそも久能整自身がやや金田一耕助チックな特徴を有しているからだろう。

 

地方の名家、しかも広島(横溝正史小説の舞台である山陰地方、、、ではなく山陽地方だが)、古い因習、家督相続(今回は遺産相続)、おどろおどろしい言い伝え、重々しい雰囲気の日本家屋。。。とまさに横溝ワールドである。

気のせいか、市川崑ばりの陰影に富んだライティングも見られる。

撮影に使われた広島の旧野崎邸は、過去に「犬神家の一族」でも使われたそうで、納得。

 

今回の映画版での注目は、やはりヒロインを張った若干20歳の原菜乃華だろう。

最近の若手では注目株筆頭だ。

可愛らしい外見からは想像できないとても芯の通った、しっかりした演技が彼女の魅力。

今回の狩集汐路役でも、おてんばに見えながら、久能に見透かされたようにガラスの心を内に持つアンバランスで脆い少女を演じており、その演技力に感服した。

彼女ヒロインで、ぜひ金田一耕助ものを撮ってもらいたい。

 

浜辺美波が昭和顔の正統派美少女なら、彼女は今風の美少女。

それも親近感のあるタイプで、透明感が魅力。シリアスもコメディもできる、将来が楽しみな女優さん。

 

共演陣はあまりに豪華なので全員は書けない。

石橋蓮司は写真だけの出演だったり、劇中の朗読シーンは松本若菜が声だけの出演だったり、中心人物に町田啓太、萩原莉久、松下洸平ら今をときめくイケメン勢ぞろいだったり。

ベテラン俳優も多数出演しており、非常に「分厚い」。

 

ちなみに鈴木保奈美や松嶋菜々子など往年の名女優も出演していたが、松坂慶子が出ていたので「彼女が犯人か!」と早とちりしてしまったのが恥ずかしい。

だって、横溝正史ドラマはたいてい大女優が犯人だから、、、、ww

 

「ミステリという勿れ」は、主人公の久能整の特異な性格で成り立っている物語だ。

彼は幼少期にネグレクトを受けて心に傷を負ったという設定のため、随所に子供に対する彼の心情が描かれることが多い。

 

映画版でもそこに焦点が当てられており、サスペンスストーリーでありながら子供に対する大人の無神経さへの軽蔑が見て取られる。

ラストシーンでそのテーマ性を、原菜乃華は体当たりで表現し演じ切ったので素晴らしいと思った。それは思わず涙ぐんでしまうほどの名シーンと言える。

 

久能整が放つ理論は洞察力に優れており言い得て妙でありながら、一方で屁理屈のようにも聞こえる。そこを説得力を持たせて聞かせるセリフ回しができるのが菅田将暉のすごいところか。

 

ちなみにエンディングクレジットになったからと見るのをやめてはいけない。

終わってから、やっと伊藤沙莉、筒井道隆、尾上松也が登場するからだ。

永山瑛太扮する犬童我路はまだ逃亡中。

まだまだシリーズを楽しめるのだろうか。