MATTは記憶力が良い方ではない。しかしそれを悔やんだことはない。
嫌な記憶は「なんかそんなことあったなあ」程度で、楽しい記憶だけ覚えていればいいではないか。人生その方が豊かに生きることができる。
記憶とは主観的であいまいで、本人にとって都合よく作用する。
そうでないと、精神が崩壊してしまうからだろう。
古くはフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」が有名だ。
(ブレードランナーの原作だ)
最近のドラマでは似たような設定で、「たとえあなたを忘れても」があった。
本作には記憶障害を持つ主人公が登場する。
日野真織(福本莉子)は、事故で前向性健忘という記憶障害を患っている。
一晩寝ると前日の記憶がすべてなくなってしまう。
彼女と、あることがきっかけで付き合うことになる神谷透(道枝駿佑)との切なく悲しい恋物語。
福本莉子の作品は初めてみたが、透き通るような美少女ぶりは浜辺美波を彷彿とさせる。
それもそのはず、福本は第8回東宝シンデレラのグランプリで、浜辺美波は第7回のニュージェネレーション賞。沢口靖子、長澤まさみはじめ歴代受賞者は皆、「清楚な美少女」である。
この映画にも、過去のグランプリ受賞者の野波麻帆(透の亡き母親役)、審査員特別賞の水野真紀(真織の母親役)らが出演。
イジメっ子たちから真織に告白すればイジメるのをやめるという条件を提示され、クラスのいじめられっ子を救うため、真織に告白する透。
振られたところをからかうつもりだったイジメっ子の予想に反し、真織は透の告白を受け入れる。そしてそこには3つの条件があった。
物語の後半で3つの条件のの理由が明かされる。
記憶障害を隠しながら付き合っていた二人だったがある時、透に障害のことを打ち明けたことで二人の距離はぐっと接近していく。
そして3つ目の条件であった「本気で好きにならない」を二人とも破り、お互いの気持ちを確かめあい、愛し合っていく。。。。
ピュアで美しいストーリーであるが、2人の生き方を大きく左右する真織の友人役・綿矢泉を古川琴音が好演している。
福本はすでに主演作を何本も持っているとはいえ、まだ若い。古川の演技は圧倒的な存在感で、後半などは特に主演ではないかと錯覚するほど。
彼女の演技を堪能できたたけでもこの映画は見る価値があり。
もちろん福本莉子も良かったのだが、随所に見せる古川琴音の情感あふれる演技に魅了された。
古川琴音。大好きな女優さん。主演よりも共演で輝きを放つ役者さんだ。
透の父親に萩原聖人、姉の神谷早苗に松本穂香。
真織の父親には野間口徹(あまり出番無し)。
物語終盤、透の死後、精神が崩壊しそうになる真織を救うため、泉と早苗が真織の日記の改ざんを相談するシーン、そして苦渋の決断後に早苗が日記を書きお直すシーン、泉が真織の部屋中に貼ってある、透の生きていた証になるようなものを消そうとするシーンは、切なくてウルウルしてしまった。
透は真織との日々の中で、自分が仮にいなくなっても彼女の記憶の中に生きるような仕掛けをして去って行った。
その事実を知った泉や早苗のみならず、観ている側も二人の愛の大きさ、深さを知ることになる。切ないが前向きな未来を想像できて良い。
主演の福本莉子は大阪出身。
最近20~30代で活躍している女優さんに、大阪出身者が多くて嬉しい。
ぜひ、いつか大阪弁での演技も期待したい。
福本莉子。
浜辺美波とともに清楚系で将来が楽しみ。