まったくもって、勘違いだった。

永野芽郁は「マイ・ブロークン・マリコ」「母性」あたりで女優として成長したんだ、と思っていたが、2021年公開のこの映画ですでにそのレベルにあったのだった。

それほど永野芽郁の女優としての存在感が確かな映画として、印象的。

この非常に難しい役を、弱冠22歳の永野芽郁は感情表現豊かに演じた。

 

ここ1年は「初恋ざらり」以外なかなか泣ける作品がなかったが、この映画で久しぶりに泣けた。特にラスト30分は鼻水すすりながらずっとウルウル泣いていたな。

 

血のつながらない母親との関わりが題材のドラマといえば「mother」が代表作。

この物語も一人の自由奔放に生きる女性・梨花(石原さとみ)と、血のつながらない娘・優子(永野芽郁)との関係性に加え、3人の父親である森宮壮介(田中圭)、泉ヶ原茂雄(市村正親)、そして実の父親の水戸秀平(大森南朋)が絡み、複雑かつ感動的な人間関係を描いていく。

 

おそらく娘を持つ父親なら共感できる部分はたくさんあるはずだ。

父親というのは母親と違い都合のよい生き物である。

母親ほど育児には関わらないし、母親のように腹を痛めて産むわけでもない。

なんとも微妙な存在なのだが、そうであるからこそ盲目的に娘を愛することが出来る存在なのであろう。

 

途中まで優子の幼少期と現在が並行して描かれ、見る側はそのトリックに気づいても気づかなくとも物語を楽しめる。

設定はかなり振り切れていて現実的ではないが、このくらいの誇張は必要だ。人生というのは、大なり小なり思いもよらぬハプニングと信じられない運命のいたずらでできているものだ。

もし優子の本当の母親である香織が生きていたら、あの時、優子が梨花ではなくパパを選んだら、もし梨花が森宮に助けを求め結婚をしなかったら、、、、

人生というのは、まさに数々の「もしも」の連続でできている。

 

梨花の生き方はあまりに自由過ぎて、本当に娘のことを考えて生きているのか?と疑念が沸くが、それらの「?」もラストで泉ヶ原の口から真実が明かされることで納得。

その真実を知った時に、血のつながらない母親の深い愛情に気づき、優子のみならず観ている側も涙流さずにはいられない。

 

もう一人の主人公とも言える、梨花役の石原さとみ。

美しくも弱さ、儚さも持ち合わせる彼女だからこそ、梨花という役に命を吹き込めた。

素晴らしい演技だった。

 

幼い優子が梨花に何げなく放った「私より先に死なないで、長生きして」と言う言葉や、優子の卒業式に少し映り込んだ後ろ姿など、最後に伏線回収される。

たくさんの深い愛情に育まれてきて、名前の通り優しい人間に育った優子。

彼女の人生は血のつながりのない親子関係ばかりだったが、それでも血のつながりのある家族よりも深い愛と幸せが、そこにはあった。

 

優子の結婚相手に岡田健史、その母親に戸田菜穂(きれいだなあ、、、)、優子の友人にこの間惜しまれつつ引退した萩原みのり。

優子の無くなった母親・香織役に奈緒(写真のみ)。

奈緒と永野芽郁の共演は多数だが、こんな形での共演もあるとは、、、笑

 

優子が森宮とバージンロードを歩くシーンは、もう涙無しでは見られません。

自分がこの立場になったら、歩く前に式場に入った瞬間に泣きそうで怖い。。。笑

色々書いたけど、人間の、親子の幸せとは何かを素直な気持ちで感じ、泣けるお勧めの一品。