以前、寺尾聡主演の映画版を見たのだが、ほとんど記憶に残っていない。

ブログにもupせず、その時の感想の記録も無いのでなおさらだ。

 

そこでたまやんのお勧めもあり、WOWOWのドラマ版を見てみた。

ほぼ初見の感覚である。

 

今回のドラマ版の率直な感想は、実に素晴らしい作品だったということ。

東野圭吾の原作、監督・片山慎三、脚本・吉田紀子らスタッフ、加えてダイナミックで迫力あるカメラも素晴らしかったし、俳優陣の熱演がドラマをリアリティあるものにしている。

 

テーマは少年犯罪。

少年法に守られた恐ろしい犯罪、殺人者を法は裁くことができない。

この国の正義はどこにあるのか。

ラスト近くで、古舘寛治、三浦貴大の二人の刑事は、辞職した上司の国村隼から「警察官は市民を守るのではない、法を守るのだ。しかし、その法が犯罪者を裁けないのであれば、どこに正義があるのか」というようなことを言われる。

答えの無い問い。

そのラストシーンまで、6話の物語りは重厚で手堅い脚本のおかげで息もつかせぬ展開を提供してくれる。

 

とにかく俳優陣の熱量がすごい。

娘を惨殺された父親・長峰重樹に竹野内豊。2009年の映画版では、彼を追う刑事役(ドラマ版では三浦貴大)。

娘には河合優実。彼女が襲われるシーンは壮絶で、その演技力はこのころから確かなものだった。彼女の冒頭の迫真の演技があるからこそ、視聴者は長峰に同化しストーリーにどっぷりとハマりこむことができる。

 

犯人役の市川理矩、名村辰という無名の二人も迫真の演技を見せ、井上瑞稀も好演。

古舘寛治、三浦貴大の二人の刑事は人間臭くてリアルだ。

個人的には好きな二人の俳優の活躍シーンが多くてうれしい。

 

長峰をかくまう木島和佳子役の石田ゆり子は今回のような影のある過去を持つ女性を演じると、非常に魅力的だ。

また霧島れいか、徳永えり、瀧内公美、MEGUMIなどの脇を固める女優も確かなキャスティング。

和佳子の父親役の本田博太郎も渋みがある。

 

作り手は、視聴者が自分の身になって少年法や犯罪被害者のことを考えるきっかけを作るため、相当この作品のディテールにこだわったと思われる。

刑事たちの心情表現や行動はとてもリアリティに満ちており、また少年たちの犯罪のむごさは直視できないほど。

 

そのため、長峰の絶望や苦悩はそのまま自らの感情に注ぎ込まれてくるようだ。

娘を持つ父親ならばわかるはずである。

 

物語りとして大変良くできたドラマであるが、エンタテインメントとしても素晴らしかった。

映像も凝っているし、クライマックスの新宿での犯人確保のシーンは迫力満点。

 

すべてにおいてバランス良く見ごたえある作品として、心に残る一品だ。