子育てをする母親を巡る物語というのは、ドラマになりやすい。

 

それは母親と母親を取り巻く環境、人間関係が複雑に絡み合うことで、起こる事件・事象の要因が何であるか、その答えが一つではないし答えが見つからない場合もあるからだ。

今回の「坂の途中の家」を見て、良質な原作・ドラマだと思ったのはそこにある。

 

柴咲コウが出ている作品を観たのは久しぶりだ。

「インビジブル」以来か。「バトル・ロワイアル」で初めて見た時は、その思い切りのよい演技に衝撃を受けた。今、キャスト見返してみると、前田亜季とか栗山千明も出ていたのね。

 

物語りはサスペンス調で、自分の赤ちゃんを殺めてしまった母親の逮捕前の人柄をインタビューしているフラッシュバックが、もしかすると、柴咲コウのことを言っているのではないか。。。。とにおわせる構成になっている。(実際にそうなのだが)

 

柴咲コウは自己肯定感の低い真面目なお母さんを好演している。

それこそどこにでもいる、大人しい育児に一生懸命な女性。

そこに危うさがあり、徐々に精神的に追い詰められていく様を見る側に不安を抱かせるのに十分な演技で魅せてくれる。

またなぜ、彼女がそのような性格を持つに至ってしまったかの考察も面白い。

 

柴咲コウ演じる里沙子は、ある日裁判員(補欠)に選ばれ、水野美紀演じる安藤水穂の裁判に携わることになる。そこで出会った同じ裁判員の、芳賀六美(伊藤歩)、山田和貴(松沢匠)、そして判事の松下朝子(桜井ユキ)らも、それぞれ子育て、夫婦関係に問題を持っており、彼ら・彼女らの家庭の問題も並行して描かれる。

 

決して子を殺めた母親の行為を肯定するものではないが、そこに至るまでの過程には母親だけではどうしようもできなかった、様々な要因があったに違いない。

そしてこの物語で描いているストーリーは、それらの最大公約数的なお話に過ぎないのだ。

 

ゆえに、判決のシーンで温情判決を絶対にしないという裁判長(利重剛)が、主文で判決を言い渡した後、被告に寄り添うような言葉を付け加えたのは、まさに原作の筆者が言いたかったことであろうし、このドラマのカタルシスを感じるシーンでもある。

 

このドラマは母親のみならず、夫、父親、子を持つ母親の両親、子を持たない人たち、様々な人に観てもらい、それぞれの立場で考えるきっかけになる。

理解し、寄り添うことが大切であり、それができるのは母親に一番近い家族しかいない、ということなのだろう。

ただ、それができないことが多く、こういった悩める母親を生んでしまう現状があるのだが、、、

 

被告役の水野美紀は終始スッピン、無表情で最初誰だかわからなかった。

しかもセリフは公判中の受け答えのみ。なかなか難しい役である。

 

おそらくMATTも含め最大公約数的なダメ夫役に田辺誠一。

里沙子の義理の両親に風吹ジュン、光石研、里沙子の母親に高畑淳子、安藤水穂の夫に眞島秀和、その母に倍賞美津子。

ほかにも玄理、窪塚駿介、酒井美紀、滝沢沙織などなど

 

キーマンとなる児童福祉司に西田尚美。なかなか良い役でした。