翔田寛の警察小説が原作。

警察小説といえば、MATTの中では横山秀夫の「64(ロクヨン)」が金字塔だ。

小説、ドラマ、映画、すべて素晴らしかった。

この翔田寛の「真犯人」は「64」とは違った視点で、傑作だと思う。

原作もいつかは読んでみたい。

 

「64」が警察小説でありながら、広報課を舞台にした作品というの点で斬新かつ面白かった。

一方、「真犯人」はまさにゴリゴリの警察、刑事小説。

主人公の重藤警視(上川隆也)はノンキャリで、現場たたき上げの刑事。

「事件関係者への直接聴取=直取り(じかどり)」や、「筋読みではなく、証拠を重視する」といった、本当に現場で地を這うように捜査をする、本物のデカだ。

 

WOWOWドラマは5話の構成だが、物語の導入部から中盤、ラストに至るまで緻密な捜査の全貌が丁寧に描かれていて、警察モノ・刑事モノが好きな人にはたまらない作品となっている。特に、高嶋政伸演じるキャリアの榛(はしばみ)県警本部長とのやり取りや、未解決の誘拐事件を捜査する捜査班の苦悩、真相に近づいたかと思ったら、また遠のいていく、という一進一退の捜査状況など、リアリティに満ちている。

 

何より、重藤警視が率いる特別捜査班のたたき上げの老刑事・辰川(でんでん)や、清廉そのものの若い刑事・日下(小泉孝太郎)らが生き生きと躍動し、田中要次、浜田学、清水伸、甲本雅裕、森岡龍ら個性豊かな刑事たちもこのドラマには欠かせない存在となっている。

 

上川隆也の抑えた演技が、このドラマでも健在。

徹頭徹尾、職人のように仕事を進めるがその無表情の裏に熱い人間性を秘めている、という役柄が本当に上手いし、完璧だ。

 

34年前に起きた誘拐事件に巻き込まれる一家、尾畑家は小枝子(長野里美)、理恵(内田有紀)、清三(北見敏之)、元夫の須藤(尾美としのり)ら。

14年経ち時効成立前に、県警本部長の命の元立ち上げられた特別捜査班による再捜査が始まる。それまで継続捜査班が行ってきた捜査を、もう一度一から調べなおしていく。

14年も経っているので目撃証言もあいまいになり、環境も人も変わり、証拠探しも難航を極める。事件捜査がいかに初動が大切かというのを痛感する。

 

実際に未解決事件は日本にも多数存在する。

子供が行方不明になったり、未解決誘拐事件などは、今回のドラマの筋書きのようなことが実際に起こっているのかもしれない。

そのあたりの詳しい記録はAmebloで「雑感」というブログがある。

未解決事件を丹念に調べあげた方が書かれているが、このブログは本当に情報量と考察力が素晴らしく、MATTもほとんどの記事を読ませてもらった。

その筋に興味のある方は必見だ。

 

7人の特別捜査班が地道な捜査を重ねて真犯人にあと一歩まで詰め寄るが叶わず、時効を迎えてしまう。だが、重藤警視、辰川刑事らの執念とそれを引き継いだ若い日下刑事らによって、最後は驚愕の真相にたどり着くまで、息をもつかせない。

自白強要による冤罪や、警察組織の保身による捜査ミスなど様々な黒い歴史もあるのかもしれないが、このドラマに描かれているような、多くの実直な刑事が真摯に事件と向き合って、日々靴底をすり減らしている、と強く信じたい。

 

ドラマにはその他、池内万作、モロ師岡、近藤芳正などのベテランも共演。

 

内田有紀はこのドラマの時点で44歳だったが、変わらず美人で素晴らしい。

久しぶりに見たけど、綺麗です。

 

でんでんの刑事役は最高。刑事ドラマ好きにはこの「おやっさん」的ポジションは必須。

是非、何か刑事モノドラマがあれば、また「おやっさん」ポジションを演じてほしい。

 

小泉孝太郎の若手刑事ははまっていた。一方で高嶋政伸の役作りは素晴らしい。役へのこだわりと作りこみは敬服する。

 

長野里美の我が子の遺体と対面した時の演技もすさまじかった。ベテラン女優の演技力のなせる技だ。

 

このドラマも刑事モノ好きには、強くお勧めの一品。

WOWOWドラマを連続で見ているが、ここまで3戦全勝。

まだまだ面白いドラマがある。