まったくうかつだった。

毎週観るドラマからは外していたが、ムロツヨシが主演で平手友梨奈が出るというので、興味があり取っておき、この2日で鑑賞完了した。なかなか面白かった。

 

テッパンの弁護士ものでありながら、大女優の敏腕マネジャーがひょんなことから法律事務所のパラリーガルになり、天才だが駆け出しのひよっこ弁護士とバディを組む、という設定。

 

ユニークなのは設定だけではなく、「表舞台で活躍するヒーローが主人公ではなく、その裏で支えている無数の無名の人が主人公」という点である。

ムロツヨシ演じる蔵前勉は人の心を読んで先回ってことを成す、マネジャーとしては敏腕で優秀。しかし世間的には何の特別な資格も持ち合わせず、その人柄と鋭い洞察力だけで世渡りしてきた男。世間的にも無名だ。

なんとなく、50代以上の多くの中年男性には刺さる設定ではなかろうか。

 

そんな中年男と一緒に仕事をするのが、まだ20代そこそこの新人軒弁である平手友梨奈演じる天野杏。決して交わることもなく、日常会話すらままならない二人の関係性の構築がこのドラマの背骨だ。

親子ほど年の離れた世代だから、そもそも分かり合うということ自体困難。

でも実世界ではこういった世代感ギャップを抱えながら、ともに一つの目標に向かわなければならない時がある。お互いを思いやり、信じ、敬うことができないといい仕事はできない。

蔵前と杏のやり取りは、それぞれの世代の目で彼らを観ることで、自らの生き方のヒントになり得るかもしれない。

 

平手友梨奈は独特の雰囲気を持っている。

アイドル出身女優としては、川栄李奈や西野七瀬とともに面白い素材だと思う。

この天野杏役も、なぜ彼女が選ばれたのかはドラマを観て納得した。

普段の素の彼女のように不安定で、危ない感じがにじみ出る役者じゃないと杏は演じ切れない。素晴らしいキャスティングだ。

 

第一話は予定調和的ストーリーで、果たしてこのまま見てよいのかと一瞬迷ったが、二話以降ぐっとテンポがよくなり、面白くなっていく。

何より話が進むにつれ、蔵前と杏が離れては近づき、と絶妙な調子で距離感が縮まっていく脚本が心地よい。これがあるから最終話まで一気に観ることができた。

 

それぞれのエピソードでも、報われない人たちを見つめる眼差しの暖かさを感じ、優しすぎる男・蔵前と、常に余計な感情は排し法の下に平等な杏のコンビネーションが、ドラマの均衡を保っている。

 

二人が勤める「香澄法律事務所」の所長に戸田恵子。

弁護士に松尾諭、村川絵梨(キャリアウーマンの色気満載で素晴らしい)。

パラリーガルに酒向芳、日向亘。

ライバルの弁護士事務所には、杏の異母姉妹であるさくら役に、江口のり子(弁護士役、かっこいいです)、大倉孝二に菅野莉央(彼女、よかった)。

そして、30年一緒に仕事をしてきた蔵前をバッサリクビにする大女優は吉瀬美智子。

その蔵前の元カノに安達祐実。

さすがドラマのフジ、絶妙かつ的確なキャスティング。

 

村川絵梨の大人の女の色気が素晴らしい。

 

50代以上には、時折蔵前がぶち込んでくる90年代の懐かしドラマネタが楽しい。

それもフジのみならず、他局の名作ドラマネタもちょいちょい入って来て、思わずニンマリしてしまう。ムロツヨシの楽屋落ち的セリフも絶妙の間合いで上手い。

 

ゲストは、入山法子、田中真琴、有森也実(懐かしい)、野村真純(好きです)、うらじぬの、浜野謙太、綾田俊樹、津田健次郎、遊井亮子、野間口徹、安藤聖、草村礼子、向里祐香(ちょっともったいない使われ方)、浅野ゆう子(おお!)、小林涼子、矢柴俊博、山崎一、志田未来、浅香航大、蛍雪次郎、阿南敦子と、ベテラン、有名俳優、若手、バイプレイヤー、バラエティに富んだ布陣。

 

最終話にかけてはちょっとドタバタ感があり、雑な感じもしたものの演出・脚本の妙と俳優陣の演技で乗り切った。

ムロツヨシの硬軟どちらもキッチリ演じる技量の高さと、まだ成長途上だけど女優に大事な「雰囲気」を持ち合わせた平手友梨奈のコンビネーションは、新たなバディものとしての可能性を提示したと感じる。シーズン2でもスペシャルでもいいので、また観たいと思わせる作品となった。

 

最後に、時任三郎のナレーションとザ・ローリング・ストーンズの新曲(Angry)が主題歌というのも、ナイスでした。

 

「ACTUS」さんという会社が手掛けた、香澄法律事務所のインテリアも素敵でした。

人の温かみを感じるデザインと調度類。

ライバルの天野法律事務所が無機質なデザインなのと対照的。