堀田真由のドラマは、ずっと見ている。
ちょっと幸薄そうで、はかなげな感じがする古風さが印象的。
一番最初に彼女を意識したのは、2016年の「獄門島」。
狂気的な3姉妹の一人を演じていて、この娘良い、、、と思ったのだ。
空(そら)を演じる共演の萩原莉久とは「3年A組」でも共演していた。
記憶障害をもった空と、堀田真由演じる美璃の恋物語が、神戸の美しい風景の中展開されていく。
「日曜日の夜ぐらいは…」(岡田恵一脚本)「何曜日に生まれたの」(野島伸司脚本)に続く第3弾、ともに大物脚本家の書き下ろしで面白かったが、今回も同様に、浅野妙子のオリジナル脚本で期待された。
だが、なんとなく盛り上がりに欠けた展開だったのは否めない。
記憶障害を題材にした設定、ストーリー展開、音楽、ロケ地など、どれも悪くなく俳優陣も豪華だ。空の母親に壇れい、父親は丸山智己。茜(畑芽育)の母親は須藤理沙。
美璃のいとこの心療内科医・保に風間俊介、空の幼馴染・沙菜に岡田結実。
その他、加藤貴子や松井玲奈など、キャスティングも完璧に見える。
それなのに、何かぐっとくるものが無いまま9話で終わってしまった。
障害を持った男性との恋物語は、ちょうど一年前にヒットした「silent」があり、よくネット上で比較されていた。
障害といっても全然質が違うので比べるべくもないが、若い感性がふんだんに盛り込まれていた「silent」に対し、本作品は少々湿っぽく古い感じがしたからだろうか。
堀田真由の辛い困難に耐え忍ぶヒロイン像は決して悪くないのだが、だとすれば作中にもう少し視聴者がぐっと入り込めるエピソードが欲しかったのは事実。
実際、美璃と空のエピソードより、その裏にあった茜のエピソードの方がちょっとウルっときて物語に入り込みやすかったかもしれない。
茜の悲しい過去と、主治医の保に対する切ない感情を、畑芽育はとてもストレートに演じていて好感が持てた。
また空の幼馴染の沙菜の作品中の立ち位置が、あまりに可哀そうでむしろそっちの方でまたジーンと来てしまったり。。。岡田結実はこういった役つくりが巧くて感心した。
「silent」もそうだったが、メインストーリーより裏ストーリー(夏帆と風間俊介のラブストーリー)の方が泣けたのは、何かの偶然だろうか。
せっかくの堀田真由初主演連ドラだったが、前2作が面白かっただけに、この作品がイマイチ盛り上がらなく終わったとしたら、彼女の今後に影響しないかちょっと心配だ。
その他感想としては、神戸の街は本当に美しい。
特にMATTは、淡路島から本州に向かう明石海峡大橋から望む神戸の街の風景が好きだ。
もっと神戸が舞台のドラマはあってもいいと思うのだが。
横浜とはまた違った、落ち着いた美しさが神戸にはある。
壇れいはこの作品で母親役を演じていたが、少し丸まった背中で20代の息子を持つ母親を表現していた。少し前に放送された「VIVANT」では外務省の女性キャリアを演じ、背筋がピン!と延びたスーツ姿で出演していたのとは正反対。俳優ってすごいと思った。
それから畑芽育。
山田杏奈同様、高校生の役ばかりだったが今回はちょっと大人な役。
感情表現も豊かに、また関西弁もまずまず上手にこなしていてとても良かったと思う。
こういうサブキャラを何作品か経験して、いつかよい作品で主演をつかみ取ってほしい。
とてもキュートな畑芽育。この作品では記憶障害に悩む少女を好演。
カメラマンもわかってか、美しい横顔を抜いたショットが多かったのは、ファンとしては嬉しい。
最終回のラストシーンあたりはとてもよかった。
また空が記憶をなくすのではないか、というドキドキ感や、ラストシーンでは二人の将来を暗示しながらも、幸せになろうとする前向きな力を感じた。
あと数話、尺があればもう少し違ったドラマになっていたかもしれない。
惜しい作品だった。