タイムパラドクスもの、といえばMATTより年上の年代は、不朽の名作「ドラえもん」で、様々なセンスオブワンダーを子供ながらに楽しんだと思う。

 

藤子不二雄の描く未来・現在・過去の話は、小さな子供に夢と、時空を超えた人間の営みを想像する力をくれた。多くの日本の子供が、いつかは時をかけることができたら、と夢見たものだった。

 

そんな世代なので、こういうお話はめっぽう好きだ。

常盤廻(めぐ)を演じるのは吉岡里帆。

「ヨーロッパ企画」の上田誠の脚本作品だが、同じ京都出身で京都で演劇に親しんだ彼女は、上田誠の作品に出演するのが夢だったそう。

 

井浦翔(かける)を演じる永山瑛太は、どんな役も完璧にこなしてしまう凄みが最近更に高まってきた。(敢えての)安っぽい未来人コスチューム、髪型も変でおかしいのだけど、妙にはまっていて更に可笑しい、、、、なんて、永山瑛太しかできない役。

 

過去に廻と翔は一度出会い恋に落ちたが、未来人と現代人の恋はご法度ということで廻の記憶が消されてしまう。

しかし翔は忘れられずまた廻に会いに来て、少しずつ彼女との仲を再構築していき、また恋人同士となる。

 

廻と翔の二人の恋物語を中心に、タイムトラベラーを取り締まる、タイムパトロール隊、りおん(伊藤万理華)、八丁堀(じろう)、和井内(石田剛)らが絡み、ドタバタコメディを繰り広げる。

 

シリーズの前半は、未来人の泉澤祐樹と、彼が好きになった令和の時代のシンガーソングライターの女の子の1話、未来人の清水くるみと令和のホスト、吉村界人の3話、未来人の田村健太郎と、福田麻貴(3時のヒロイン)の4話、未来人の今野浩喜、事故で亡くなる妻の安藤裕子などの物語がキュンとくる。

 

タイムトラベラーと現代人の切ない物語は、2016年のドラマ「リテイク 時をかける想い」でも描かれて、心に残っている。

あちらは筒井道隆演じる父と、成海璃子演じる娘(実は未来人)の父娘の物語が、また泣かせてくれてよかったが。

あのドラマの主題歌、イーグルスの「デスペラード」がドラマの世界観にハマっていて最高だったが、この「時をかけるな」のBGMのイントロが、「デスペラード」のイントロにそっくりなのは、まさか寄せたとか・・・・・?

 

それはさておき、シリーズ後半部分、廻と翔という未来人と現代人の恋は違法であることから、タイムパトロールの面々に追いかけられるのだが、二人はタイムマシンで過去に逃避行に出る。その過程の色々な時代で、歴史のつじつま合わせをやっていくのが、また小気味よい。


それまでの二人の間や周囲で起こったことを、廻が「つじつま合わせ」をしていくのもタイムパラドクスのだいご味で、歴史は必然だったのか、作られるものなのかがわからなくなってくる。それがまたいいのだけど。

 

ラスト近くでふふふと微笑んでしまうのは、1話冒頭で通行止めになっていて、廻が行きたい道に行けず遠回りして公園に行くシーン。

ここで誘導棒を振っていた工事現場の作業員が、翔だったのだ。

1話を見た人は、なんか変なシーンだな、、、と思ったはず。

ここを見て、また1話にループしなおしてドラマを観なおすのも一興かも。

 

吉岡里帆が、仕事にも恋愛にも頑張るが、大事な場面で一歩前に踏み出せない気弱な女性を生き生きと演じている。

また永山瑛太も感情の起伏の激しい未来人を、破綻なく演じているのはさすがの演技力。

この二人の舞台演劇を見ているかのような、濃厚なドラマだった。

「リテイク 時をかける想い」とともに、タイムトラベルものではお勧めの一品。

 

最後に、りおん役の伊藤万理華は、なかなか可愛いです 笑

まさに、「りおん」という名前がピタリ。雰囲気つくりも上手。