刑事もの、医療モノ、法廷モノの3大お仕事モノ以外の、最近はやりのお仕事系ドラマ。

ここ数年で面白かったのは、

 

・ゴシップ(新聞記者/黒木華)

・前科者(保護司/有村架純)

・シッコウ!!(執行官/伊藤沙莉、織田裕二)

 

それほどでも、、、だったのが、

 

・それってパクリじゃないですか?(芳根京子)

・転職の魔王様(成田遼、小芝風花)

 

だろうか。

後者はなぜイマイチだったかというと、毎回のエピソードにそれほど起伏が無く見続けるのがしんどかった、ということが大きい。「シッコウ!!」も、執行官というなじみの無い職業にスポットが当たった興味に加え、伊藤沙莉と織田裕二の二人の実力派が演じていたから何とか見られたが、展開自体は来週が楽しみというほどではなかった。

 

その点このゼイチョーは、「徴税吏員」という税金は源泉徴収されるサラリーマンとはあまり縁のない人たちの物語。

税務署が舞台のドラマで最も有名なのは、MATTが心から愛してやまない「税務調査官・窓辺太郎の事件簿」があるが、金が絡むお話は人間模様、人生模様が色濃くなるので、話に深みが出るのかもしれない。

 

主演は菊池風磨。彼の演じる饗庭は、かなりおちゃらけなキャラだが吹っ切れているので、むしろいい。

また共演の山田杏奈とのかけあいも悪くない。

彼女の出演作はほとんど見たが、8割が幸薄い役。

今回の百目鬼(どうめき)華子役も、母子家庭出身で苦労人の役だ。

 

眼鏡をかけた山田杏奈は初。かわいい。

 

物語のスタートはちょっとミステリーの空気を匂わせながら、架空の市であるみゆきの市で起こる、様々な納税トラブルをエピソードに話が進んでいく。

このドラマを次回を楽しみに観ることができたのは、各エピソードの裏に大きな脱税案件とそれにまつわる主人公たちの復讐劇が絡んでいたことからだ。

 

少しずつ悪事の全貌が明らかになっていく中で、主人公たちが悪を追い詰めていく過程が重くなりすぎず、コメディタッチで描かれていたのも悪くない。

 

税務署の面々は、上司の光石研をはじめ、白洲迅、石田ひかり、佐戸井けん太、六角慎司ら。

饗庭の元財務相時代の同僚で、みゆきの市の副市長でともに悪事を暴くことになる相楽義実役に、本郷奏多。

彼は独特の雰囲気をもっていて、もう少し年を取ったらいい役者になる可能性を持っていると思う。

相楽グループ会長の板尾創路は堀部圭壱と並んで、悪役やったらテッパンの演技で期待を裏切らない。

 

各エピソードにおいても女優陣は市川由衣や生田智子はじめ、大島さと子、金澤美穂、小林涼子、大西礼芳など多彩だが、田辺桃子はここのドラマでもよい演技をしていた。彼女が演じる普通の女性には常に、リアリティがある。

 

「窓辺太郎の事件簿」のように、ちょいちょい出てくる納税豆知識みたいなものは勉強になるが、決して「納税は国民の義務だ!」とかいう説教じみたものではない。

個人的には最終話で饗庭が相楽グループの会長に言った言葉「困っているなら声をあげてほしい、困っている市民を助けるのが我々の仕事」という言葉が、刺さった。

 

税金は国民の、市民のためにある。

「公正・公平」に徴収した税金はそれを収めた人たちのために使われるのだ。

だから困ったら国に、市に頼っていい。だが多くの日本人、特に高齢者はそれを「申し訳ない」と言って自力で何とかしようとし、生活困窮者に陥る。また生活保護制度も色々問題あるものの、それを受けている人たちに対する世間の目も厳しい。

 

海外に住んでみると日本人の慎ましさというか、謙虚振りは時に異常に感じることもある。

日本人は義務を全うしている限り、もっと権利を主張してもよい。

ゼイチョーの最終話での饗庭の言葉に、そんなことを考えさせられた。

 

このドラマは、山田杏奈出演でなければ見ていなかったと思う。

彼女が「これまで高校生の役しかもらえなかったけど、初めて社会人の役をもらってうれしい」

と言っていたのを聞いて、見たくなった。

確かに、来年1月で23歳とはいえ、童顔で小さいので仕方あるまい。

だが、このドラマではしっかり徴税吏員としての役を立派に演じていた。

高校生以外の役が今後も増えて行けばと願う。

 

おちゃらける饗庭を時折、冷たい目でにらみつける杏奈ちゃん。

目力強い分、かなりドSな視線。

まるで蔑むような目、ドMにはたまりません、、、、笑