これまで声を出して言わなかった人たちが、声をあげるようになってきている。
今の日本は生きづらい、、、、
そんな切な想いが詰まったドラマが最近多いと思う。
このドラマもまさにそういった世相を反映しているのだろうか。
生方美久は、「silent」で確かな地位を確立した若手期待の脚本家。
あの坂本裕二が好きだというのだが、今回のドラマでは随所に出てくる、坂本裕二を彷彿とするキャストの軽妙な会話シーンが印象に残った。
松下洸平と多部未華子という、今、名実ともにトップクラスの俳優陣に加え、作り手が文句ない美男美女を、とキャスティングした今田美桜と神尾風珠。
この素敵な4人が紡ぎだす、優しく滋味深いストーリー。
椿、ゆくえ、夜々、紅葉の4人は他人と2人きりの関係になることができず、社会の「みんな」の輪に入れなかった人たち。そんな4人がひょんなことから椿の住む家に集まるようになる。
MATTは1話目からこのドラマの世界観にどっぷりとはまってしまった。
「みんな」や「普通」が支配する世の中は、日本独特のものかもしれない。
MATT自身、思い返せば小学校高学年くらいから、そんな空気に抗いながら生きて来た。
大勢の中の自分、グループの中の自分、心地よさを感じることが無いのに、一緒にいることを強いられる苦しさ。
そして、違うことに対する世間の冷たい目。
4人の男女が語る一言、一言に耳を傾けながら、「そうだよね」「なんでそうならないのかな」とうなずきながら物語に没頭した。
世間では前作の「silent」と比較されているが、全然違う方向性の作品だ。
脚本家の生方美久自身、このドラマこそ本当に作りたかったのではないかと思うほど、彼女の想いが詰まっている気がする。
良いドラマの条件の一つに、何も特別なことは起こらないけど、登場人物の一挙手一投足や、人間関係の機微だけで十分楽しめることというのがあると思う。
「結婚できない男」や「俺の話は長い」、「ゆとりですがなにか」などなど。。。
「いちばんすきな花」も4人がただ、会話して一緒に過ごしているのを見ているだけで、なんだかその場に一緒にいる気になれる。ドラマと同化していく心地よさがある。
主演の4人を支える共演陣もいい俳優さんで固められている。
仲野太賀、田中麗奈といった主役級に加え、菅原大吉、田辺桃子、臼田あさ美、泉澤祐希などの実力派に加え、美保純、斉藤由貴のベテラン女優、葉山蒋之、坂口涼太郎らも脇を支える。
そして、MATT注目の将来期待の白鳥玉季も、このドラマで重要な役回りを演じている。
色々なドラマで引く手あまたの彼女、その演技力と存在感はきっと近い将来花開くと思う。
まだ若いのに女優としての表現力、すごいと思う。
楽曲もドラマの世界観を忠実に表現し、盛り上げている。
藤井風の主題歌、得田真裕のBGMも優しい曲調でマッチ度は抜群。
4人にとっての「いちばんすきな花」は、4人が一緒にいるその時間、空間だったに違いない。
ファンタジーめいたドラマの世界が嘘くさく見えなかったのも、これまでじっと我慢してきた多くの穏やかな日本人の声を代弁していたからだろうか。
だからこそ、4人のファンタジーが心地よく、いつまでも心に残るのだろう。
今クールのドラマの中でも、心に深く刺さった作品だった。
今田美桜は、それまでそんなに意識したことなかったが、このドラマでの彼女はとても良かった。斉藤由貴演じる母親との葛藤、邂逅のシーンは涙もの。
彼女演じる夜々は、とても魅力的な女の子だった。