庵野秀明「シン」シリーズはこれで3作全て制覇。
3作品を観終わって感じたことは、庵野秀明が戦略的にこの順番で撮ったのではないか、ということ。
「シン・ゴジラ」で老若男女に馴染みのあるゴジラを題材に、大衆に受けるコンセプトで世に送り出し、日本中に様々な議論を巻き起こし話題を作った。
その成功をもとに、自分の作りたい作品を撮れる下地を作り、スポンサーをつけて立て続けに「シン・ウルトラマン」、「シン・仮面ライダー」を撮影した。。。。。
今回観た「シン・仮面ライダー」はどこか「エヴァンゲリオン」にも通ずる、「人」の存在の根幹に切り込むようなテーマが流れていた気がする。実は一番庵野秀明が撮りたかったテーマではなかろうか。
3作品のどれが好きかと問われると、テーマ性やストーリーの重厚さも相まって「シン・ゴジラ」が一番だが、次にこの「シン・仮面ライダー」が好きかもしれない。
「シン・ウルトラマン」はウルトラマン自体好きなので期待していたのだけど、ちょっと消化不良な印象。
アクションに切れのある昭和顔のイケメン・池松壮壱、同じく昭和顔の柄本佑、敵のラスボスに森山未來など、決して今風のイケメンではなく、アクション映画ながら演技のしっかりした役者を据えているあたり、庵野秀明のこの作品に対する本気度が感じられる。
これはアクション映画でありながら、人間ドラマなのだ。
同じく昭和風美少女の浜辺三波の配役も、ストーリーに華を添えている。
無骨で男くさい原作だが、彼女の可憐で儚い存在が乾燥しがちな男のドラマに潤いを与えている。
役者陣も庵野秀明作品らしく豪華だが、常連の市川実日子、斎藤工、塚本晋也、竹野内豊、そして手塚とおるはメイクがグロすぎて誰かわからずww。
長澤まさみに至っては、セクシーなサソリオーグ役で出て来た時はおー!!っと世の殿方喝采の嵐だったが、あっという間にヤラレてしまうというもったいなさ。。。。
西野七瀬のハチオーグは、個人的にはありで好きです。。。。
上杉柊平もちょい役ながらよい存在感。
松坂桃李や大森南朋は声だけの出演。
(松坂桃李の演じた「K」は、懐かしのロボット刑事K)
更に、本郷猛の父親役の仲村トオル(警察官)と彼を刺す犯人に安田顕なのだが、回想シーンのみで、安田顕に至ってはヌキの絵すらなし。。。。。
それはともかく、全編通して改造人間の悲哀と、妄信的な科学者が作り出す破滅的デストピア、そこに少し色恋的エッセンスも+して、新解釈の仮面ライダーとなっている。
ロケ地選定や絵造りもオリジナルの世界観を尊重し、考え抜かれていて印象深かった。
物語の世界観を語るための絵作りやロケ地選びにこだわりを感じる。
庵野流の難しい科学用語・専門用語をスルーして観ても十分楽しめる一品ではないかと思う。