松岡茉優は20代の女優さんの中で、今、人気・実力ともにNo1だと思う。

ここ数年のドラマ・映画での彼女の演技はついつい魅入ってしまう。

この映画は綿矢りさ原作の2017年の作品。

彼女の原作は読んだことないのだが、今回の作品含め綿矢りさの描く世界は好きかもしれない。

当時まだ22歳だった松岡茉優の、渾身の演技が楽しめる一品。

 

綿矢りさ原作映画では「ひらいて」(山田杏奈、芋生悠主演)を観たことあり。

「ひらいて」の監督は首藤凛、「勝手にふるえてろ」は大九明子。

ともに女流監督だが、綿矢の作品は女性監督でないと描ききれないだろう。

あの混沌としてモヤモヤとした、誤解を恐れずに言うと男から見ると「なんてめんどくさくて、ごちゃごちゃしてるんだ」という繊細な深層心理をつまびらやかに見せないとならないからだ。

 

松岡茉優演じるオタクで拗らせ女子の江藤良香の、10年思い続けている片思いの彼・一(北村匠海)と、会社の同僚で良香に告白してくる霧島(渡辺大知)をめぐる恋愛物語。

 

なのだが、映画の前半は良香のモノローグを中心とした妄想世界が繰り広げられる。

良香の思考、言動、行動はほぼメンヘラ女子で、おそらく会社にこんな人がいたら誰も近づかないのだが、これはかなりデフォルメされているだけで、女性から見るとどこか共感できる部分が多々あるのだろう。

 

物語中盤のシーン、タワマンのベランダで一といい雰囲気になりかけた時、実は一は自分の名前を知らなかったことに気づき、それまでの幸せが一気に崩壊して奈落の底に突き落とされていく描写は、なかなか見どころありだ。

 

人を好きになるということは幸せである反面、それ以上の不安がつきまとう。

不安は好きの気持ちが大きくなればなるほど、どんどん大きくなっていきやがて怪物のようになり押しつぶされそうになる。

 

松岡茉優はそんな良香の脆く弱い心情を、体全体で表現している。

彼女が役に入り込み、そのものに同化してしまうことができるというのは、6年前のこの作品ですでに確立されていたようだ。

 

その他出演者は、石橋杏奈、古舘寛治、趣里、前野朋哉、池水鉄洋、片桐はいりらがいるが、それほどストーリーには絡んでこない。

MATTが10年以上前に「気になる女優さん」で取り上げ、期待していた梶原ひかりが出ているが、本当にちょい役。

松岡と同じヒラタオフィス所属なのでバーターなのか。

「冷たい熱帯魚」での演技は壮絶だったが、その後あまり活躍が見られない。。。

 

石橋杏奈。

10年ほど前、NHKの「LIFE~人生に捧げるコント~」で注目した。

楽天GEの松井祐樹と結婚。

 

綿矢りさ作品が好きで、松岡茉優の演技を観たいならお勧めの作品だ。