文句なしでこの夏ドラマ一番の作品。
というか、今年一番のドラマと言っても良いと思う。
TV東京の有名プロデューサー・祖父江里奈、スタッフの熱意、一流の役者、そして原作とすべてにおいて完璧なタッグにより、心に残る作品に。
知的障碍者が主人公の原作を、テレ東が臆することなくドラマとして昇華させた。
主人公の有紗を演じるはMATTもイチオシの小野花梨。
最近の活躍著しいが、この作品は彼女にとって代表作になるだろう。
有紗の気持ちになりきり、知的障碍者であることを後悔し悩み苦しむ、難しい心の内をセンシティブに表現し演じ切った。25歳とは思えない表現力に、彼女の役者としての本懐を見た気がする。
物語に厚みを与える演技で小野花梨の演技をがっしり受け止めるのは、ベテランの域に入ってきた風間俊介。
「silent」でもろうあ者に寄り添う優しい男性の役を演じたが、このドラマでも有紗が知的障碍者だからではなく、どんな相手でも優しく受けいれる、そんな男・岡村を演じている。
風間俊介をこの役に選んだのは本当に大正解だ。
MATTの中学時代、同級生にサトシという重度の知的障碍者がいた。
後で聞いたのだが、親御さんが特殊学級ではなく健常者と同じクラスで学ばせてほしい、とお願いしたとのことだった。
まだ中学生だったMATT、彼のことをからかったり悪いこともした。それは素直に反省する。でもおしなべて、彼とは仲良くしていたと思う。それはクラスのみんなも同じだった。
思えば、そういった経験があったから知的障碍者とのかかわり方を自然に学んだのだと思う。
違いを認め、尊重する。変な気遣いをするのではなく、そのままの彼を受け入れる。
そういった経験は、子供の頃からしておいたほうがよい。
サトシの親御さんには感謝したい。
有紗は軽度の知的障碍者だ。
物語の中では、有紗が「普通になりたい」と願うシーンがある。
その思いが切なくて泣ける。
一方、岡村も親から「普通で言い」と言われ続け、普通でいることが親の期待に応えることだと消極的な人生を生きて来た。
普通ってなんだ?それがこのドラマのもう一つのテーマだ。
半ば同調圧力のように「普通」であることを求められる、日本。
でも誰もその「普通」が何なのかわかっていない。
アメリカで生活していると、そんなことを感じる場面はほぼない。
みんなそれぞれ違うことが個性であり、それこそが「普通」なのだ。
いったい普通ってなんだ?岡村は問い続ける。
そして有紗も「普通」を切望するが、彼女の願う「普通」とは岡村たち「普通」の人が思っている普通とは違う。彼女の「普通」は本当に切実なのだ。
そこが泣けるところなのでもある。
一話30分の作品だが、内容が濃く毎回心揺さぶられる。
特に終盤の11,12話は、有紗、岡村、それにそれぞれの家族の気持ちやかかわり方が描かれ興味深い。
最終12話は、久しぶりにドラマで涙流した。
有紗と岡村が再会し、お互いを思いやる気持ちに感動しきりである。
有紗の母親役の若村麻由美はこの年になって、女優としての深みが出て来た。
尾美としのりは、お父さん役が板についてきたし、熊谷真美はかなりおばちゃんになっていてびっくりした、、、、笑
個性派女優として最近活躍している、うらじぬのは注目の女優さん。
有紗の友達で知的障害のレベルが有紗より少し低い植村友子役の高山璃子もなかなか良かった。まだ無名の役者さんだが気持ちのこもった演技が素晴らしく、楽しみな役者さんだ。
西山繭子の演じる天野久美が印象深い。
彼女のような女性が職場にいると、本当にほっとさせられると思う。
そんな癒し系な、仕事のできる女性を、西山は好演していた。
いやあ、それにしても本当に久しぶりに良作に出会えた。
良い原作、作り手の熱意、それにこたえる確かな役者。
素晴らしい。万人にお勧めの心に残るドラマになった。
最後に、エンディングテーマ、ヒグチアイの「恋の色」は名曲です。
小野花梨の演技力の高さには感服。今後主演作が増えると思う。