最近見たサスペンスものとしては秀逸な一品だった。
菅田将暉と高畑充希共演という豪華さに釣られて見てみた。
それに加え、中村獅童、小栗旬共演というのも贅沢だ。
本作はサイコパスのシリアルキラーによる連続殺人もの、というMATTの大好物のフォーマットだというのも良い。
ちなみにR12指定でとにかく血しぶきが飛びまくるため、そういうのが嫌いな人は見ないほうが良いでしょう。幸せな一家が次々惨殺される(殺しのシーンは見せないが、死体が、、、)のも、気持ちいいものではない。
原案・脚本は、あの浦沢直樹の名作「MASTERキートン」や「20世紀少年」の共同原作者の長崎尚志ということで、ストーリーはしっかりしており、2時間の映画としてテンポもよく最後まで展開の読めない絶妙なつくりになっている。
菅田将暉は作画能力は高いがキャラクターに魅力がない漫画家のアシスタント、そして高畑充希はその彼女役。
最初の1時間ではなぜ高畑充希がこの役なのか、、、もしかして高畑充希の無駄遣い?と疑念を持ってしまったが、それもラスト近くでそうではない、ということがわかる。
刑事役の中村獅童と小栗旬も良い。
特に小栗旬は、暴走族あがりの優秀な刑事の役で、少々乱暴な人物だが心根が優しい男として描かれている。
サイコパスの犯人によって、どうしようもなく絶望的な殺戮が繰り返される中で、菅田将暉演じる主人公の山城と、小栗旬演じる清田(せいた)刑事の人の好さだけが救いだ。
そのサイコパスを「セカオワ」のFukaseが演じる。
これが俳優デビューというが、彼の眼の座った異常者独特の雰囲気が素晴らしい。
まだ俳優になり切っていないからこそ、逆説的にリアリティが生まれているのかも。
これを上手い俳優がやったら、逆に嘘くさくなってしまう。
話は逸れるが、、、、
ドン・シーゲル監督、クリント・イーストウッド主演の不朽の名作「ダーティハリー」で、シリアルキラーのスコルピオン役を演じたアンディ・ロビンソン。
あのスコルピオン役は映画史に残る名演と誉れ高い。
あまりに強烈過ぎたので、しばらく彼は俳優として不遇の時代が続いたという。
Fukaseもこの映画の両角役が、かなり強烈だったためしばらく同じような役しかこないのではないか、、、と心配になってしまう。
それほどマジに怖い演技だった。
物語はダレることなくテンポ良く進み、途中でまさかの清田刑事の殉職があったりと息を抜けない。
その清田を刺した犯人役に松田洋治。90年代に良くドラマに出ていた名優だが、かなりオジサン化していてびっくり。これも役作りだと思うが、さすがの演技にやはりこの人は上手いなと感心。
一点だけ気になったのは、途中犯人をおびき寄せるために山城が家族(母親は継母、妹は腹違い)を囮にするシーンがあり、ちょっとそれ無理あるのでは?と感じた。
もう少し家族との関わりが描かれていれば納得できたのかもしれない。。。
そしてクライマックスに至ってようやく、高畑充希が山城の彼女・夏美を演じたわけがわかる。犯人の両角に山城が刺されて瀕死の状態になり、夏美も狙われ包丁で一刺しされてしまう。その時の苦悶にゆがむ高畑充希の表情、、、これが極めて美しい。
「サイコ」のあの有名なシャワーシーンしかり、美女が恐怖と絶望に怯えるシーンは禁断の果実。高畑充希だからこそ、このシーンが映える。
もちろん、ここでのFukaseの演技も素晴らしかった。
そう、サスペンスでヒロインが襲われた場合は、どれだけ美しく悶えるかが重要なのだ。
その点で高畑充希以上の女優はそうはいないと思う。
どういう経緯で彼女が選ばれたかは知らないけど、このシーンのために高畑充希をあてたのなら、監督、素晴らしいと思う。
(ちょっとサイコパス的な感想になってしまったが、、、)
冒頭のシーンから細部の描写、ラストに至るまで監督のセンスがいい作品と思った。
また配役もFukaseはじめ、高畑充希、菅田将暉、小栗旬と各キャラクターにはまり立っている。脚本も良いし完璧な出来の映画でお勧めの一品だ。
ちなみに漫画雑誌の編集長役でブレーク前の岡部たかしが出演。
彼は下積み長かったから、「エルピス」で売れて良かったね。