あまりに豪華な俳優陣に、潤沢な製作費、そして見事な脚本・演出、そして映像で十分に話題となり、あえて書くことが無いという感想。

 

最近ネット上ではドラマ鑑賞において、やたらと伏線回収の種明かしや考察が話題となっているが、そればっかり見ているとドラマの本質を見逃してしまう。

それらは2回目に観るときに楽しめばいいのであって、まずは製作者の意図を汲み取り、しっかり鑑賞しようではないか。

 

VIVANTがヒットした理由は色々あるのだけど、やはり一番は「我々一般人が知らないところで暗躍する、謎多き存在」が主人公、と言うのがあると思う。

そういったリソースを扱ったドラマはこれまでもあったが、一般の人には聞きなれない組織「別班」を取り上げ、そこにやはり謎多き「公安外事警察」を絡めていき、架空の国「バルカ」を舞台に、日常と非日常のコントラストを鮮やかに見せるという手法は、わかりやすい魅力を持っている。

 

そもそも謎多き「別班」も、その実は地味な諜報活動を続ける組織で決してVIVANTに出てくるような派手な活躍はしない。007だって実際のMI6のメンバーは決して銃の名手だったりはしない。CIAだってそうだ。

乃木のようなスーパーマンは虚構の存在なわけだが、だからこそフィクションの世界に遊べるのだ。

 

これだけおぜん立てしておいて、そこで躍動する役者陣が豪華なのだから、面白くないわけがない。

 

それにしても、1話から3話まで、バルカの砂漠を往来する時の、阿部寛の存在感はどうだ。

アラビアのロレンスかと思うようなスケールの大きさ。声、目、その動き、すべてがTVドラマの枠を超えていた。ぜひ、海外の映画作品で活躍してもらいたい俳優だ。

そして役所広司の役者としての完成度は見事の一言に尽きる。

彼無くしてこのドラマは成立しないといえるほどだ。

 

そして堺雅人の安定した演技。どのような作品でも静と動を巧みに表現し演じる、一流の役者である。

 

この3人だけでも、もうご馳走様と言えるのに、主演級の役者が目白押しで正直上手い役者ばかり出るドラマがこんなにもしんどいものだとは思わなかった。

料理で言えば、ずっとメインディッシュが供されるような状況。

たまには付け合わせや、サラダも食べたいのにずっと肉、魚が出てくるような。

 

例えば乃木憂助の父親、ノゴーン・ベキの若い頃を演じた林遣都。

その壮絶な人生をすさまじい迫力で演じ切り、さすがだったがあまりに凄すぎて、ここだけで十分一つのドラマになっていた。

 

それからこのドラマ、歌舞伎役者が何人か出ていたが坂東彌十郎や市川笑三郎などは、顔だけでもう重厚感あって、やはり歌舞伎役者の顔ってすごい、、、と感心。

 

別班の指令をキムラ緑子が熱演していたが、彼女がこういう役をやるのは初めて見た。欧米のドラマ・映画に出てくるような女性指令でかっこよかった。

これまでこのポストは余貴美子くらいしか思いつかなかったが、緑子さん、イケてるね。

 

最終回で見捨てられる乃木一家の救助に来たヘリコプター操縦者と管制官の会話シーンは、音声だけ流れるが、声を田中秀幸、銀河万丈という声優界では有名な大御所が当てている、というのはこだわりを感じる。観ていてええ声やなあ、と思っていたらやはり声優さんだった。

 

最終回は含みを持たせて終わっているが、続編があるのだろうか。

だが、あのスケールでまたドラマを制作できるか心配でもある。

いずれにしても、肩の力を抜いて楽しめる娯楽大作の次回作の可能性があるのであれば、楽しみだ。