監督の石川慶は、アンジェイ・ワイダや、ロマン・ポランスキーなどが卒業生に名を連ねる、ポーランドのウッチ大学で演出を学ぶほど、映画を愛しているらしい。

 

そんな監督の撮った映画なので、実に芸術色が濃く、映画好きには非常に興味を持って観ることができるだろうけど、おそらく一般受けはしないと思う。

 

冒頭の奇抜なダンスシーンや、突然前触れもなく現れる、主人公のリナを演じる芳根京子が激しいダンスを披露するシーンなどは前衛的で、普通の映画を観たいと思っている人は、まずこのシーンで挫折することこの上なし。

 

不老不死をテーマにした作品であり、登場人物は少なく、それぞれの出演者が人間の生と死について語っていく。

最初の一時間、「ボディワークス社」を舞台にしたお話は、少し展開がわかりづらいかもしれないがその分、後の「天音の庭」のエピソードは、とっつきやすいかもしれない。

 

ここではモノクロのシーンが展開されるが、このシーンのおかげでラストシーン、135歳になったリナ(演:倍賞千恵子)が、青空に向かって何かをつかむように手を伸ばすシーンが映える。

 

こういった手法は良く使われるが、最も印象に残っているのは庵野秀明の隠れた?傑作「トップをねらえ!」の最終話「果てしなき、流れの果てに」が素晴らしい。

この最終話だけ冒頭からモノクロで始まり、ラストシーンでノリコとカズミが長い旅路の果てに地球に帰って来る。

二人の脱出ポッドが地球に向けて発射され舞い降りるその瞬間、カラーの世界に切り替わる。青い美しい地球が画面いっぱいに広がる演出、庵野秀明、さすがである。

(もちろん、田中公平の音楽も素晴らしいが)

 

話が逸れた。

この映画の芳根京子は良かったと思う。

やはり彼女はこういった作品にもっと出るべきだ。

安直な連ドラで彼女の才能をすり減らしてほしくない。

「心が叫びたがっているんだ」での彼女は、本当に瑞々しくて素晴らしい演技をしていた。

あの感性の豊かさがあれば、まだまだいけるはず。

 

それから、モノクロでの彼女はとても美しかった。

あの美しい顔は持って生まれた才能の一つである。

芳根京子という女優は、まだまだこれからだ。

 

最後に、寺島しのぶと小林薫は、やはりさすがです。

岡田将生があんまり目立たなかったのは、少し残念だった。。。