最近ひっぱりだこの岸井ゆきのの2019年作品。
この年くらいから彼女の存在感が際立ってきた。
伊藤沙莉とともに、本当にどんな役でも完璧に役になり切りこなしてしまう。
この映画では、(色んな意味で)ダメな女を演じる岸井ゆきのが見られる。
監督は今泉力哉。前にも書いたが彼の撮る絵は好きだ。
映画監督としては好きな部類。映像がしっかりしていて安心して観ていられる。
ちなみにこの映画、低予算のわりにかなりヒットしたらしい。
一途な片思い恋愛映画として、10~30代女性に響いたようだ。
原作小説は2003年上梓と古いのに。
物語は岸井ゆきの演じるテルコと、彼女の大好きなダメンズのマモル(成田凌)を軸に、テルコの友人の葉子(深川麻衣)と、彼女を好きなナカハラ(若葉竜也)、そしてマモルが好きな女性のすみれ(江口のり子)の5人で綴られていく。
正直、こういう私小説的な映画に何か意味を求めてはいけない。
観た観客がどう感じ、何を自分の中に見出したか?を問えばいい。
映画自体に共感できたのか、できなかったのか、でもよい。
その映画を見て心にどのシーン、どのセリフが残ったかでも可。
マモルは葉子が言うように本当にダメな男なのだが、そう評価している葉子もある意味ダメな女だったりする。その葉子を好きなナカハラもダメ男だし、そのナカハラをなじるすみれもろくでもない。
そして客観的に見たら大人として、社会人としてテルコは本当にダメ女だ。
ただ、それらはそれぞれの人と人との関係性においての評価であり、その人間の評価ではない。
マモルは確かに人の気持ちを全然理解しない自分大好き人間であるが、人を貶めたり傷つけたりするような人間ではない。
葉子もそうであり、すみれも基本は人に対する優しい目を持っている。
そしてナカハラはテルコに似た人物として描かれるが、ラスト付近での葉子との接し方に、テルコとは違い、ただ純粋に一途な男なのだということがわかる。
一方でテルコはかなり危ないタイプの女なのかもしれない、というのがラストのモノローグで知り得る。マモルへの感情は愛でも恋でもなくなってしまっている。
それは本人に同化してしまいたい、という願望なのだ。
これって片思いを通り越して、かなりサイコパス寄りの感情に近い。
実はこの映画、ちょっと変わった恋愛ものかと思いきや、ラストで実はホラーだったと気づく。。。なんてのがMATTのこの映画の感想だった。間違ってるかもしれないが別にいい。
そうやって色々考え想像し、楽しませてくれたのでいい映画だと思った。
何より個性的な役者(ラストで中島歩も登場。。。)たちが、伸び伸び演技していたのがよい。
岸井ゆきのが演じたテルコは、岸井だからこそ一途な想いを抱き続ける、危うく少々の不気味さも併せ持つ女の子になりえた。彼女の類まれなる才能の片鱗を見た気がする。
片岡礼子、筒井真理子、穂志もえかの女優陣、そしてテルコの子供時代の役に根本真陽。
この子、よく見る子だなあ、、と思ってたら「ゾンビが来たから人生見つめなおした件」や、「エルピス」にも出ていた。子役にまで目が行くようになってしまうとは、、、、笑