山田杏奈が出ているというだけで何気なく選んだ作品だったのだけど、存外によくできた青春映画で最後まで楽しめた。

 

MONGOL800の名曲にインスパイアされてできた映画ということだが、彼らがブレークしたころ、MATTは一度目のアメリカ駐在に来ており、その熱狂ぶりやどんな曲が流行ったのかをイマイチよくわかっていなかった。

それが、二度目の駐在中に映画を見て彼らの楽曲の良さを知るとは、何か縁のようなものを感じざるを得ない。

 

2019年公開の映画だが、バンドを組む4人は皆若い。

佐野勇斗、森永悠希、眞栄田郷敦、鈴木仁、みんな当時10代後半から20代前半だった。

途中からバンドに参加する山田杏奈も当時18歳だ。

 

MONGOL800のストレートでよどみのないメロディ、歌詞をこれまた怖いもの無しに歌い上げる若者たち。それだけでも気持ちいい。

 

MONGOL800の二人の出身が沖縄ということで、舞台は沖縄である。

必然的に基地問題もストーリーのベースになってきていて、物語が大きく動くのもそれに絡んだ事件からだ。

 

眞栄田郷敦演じる慎司はある事件で命を落としてしまい、早々にバンドメンバーからいなくなってしまう。そこから大輝(鈴木仁)が別のバンドに移り、慎司の妹の舞(山田杏奈)が加わる。こうして亮多(佐野勇斗)と航太郎(森永悠希)の2人とともに新たにバンドをスタートさせる。

 

冒頭部分で事故の後の描写が非常に拙速で、なんだこの展開は?脚本と演出がええ加減なのかな、と不安になったがそれはドラマ構成上の演出ですっかり騙されてしまった。

その後も予定調和的なストーリーではなく、一つ一つの出来事に意味付けがなされ丁寧な脚本になっていて好感が持てる。

 

基地問題の描き方も「フェンス」のように硬派に真向からではない。それはこの映画がMONGOL800の楽曲のように、真実を追求するというよりも深い愛を持って人と人がつながることが大切だと言っているからだろう。

 

米人基地の軍人の娘リサと慎司、舞とのフェンス越しの心の交流がとても胸に響く。

彼ら米人家族たちは自分の意思とは異なり、配偶者や親について彼の地にやってきたものも多いはず。彼らにとってみれば自分たち米人が沖縄の人に良く思われていないということは、心的ストレスになるだろう。

 

リサも慎司や舞との交流を通じて、もっと沖縄の人、日本人と仲良くなり互いに理解し合いたいと思っているが、それを許さない国と国との微妙な関係がそこにはある。

それは向こうとこちらを仕切る、たった一枚の頼りないフェンス以上のものなのだ。

ドイツと違い、地位協定の見直しをあいまいにしてきた日本政府の対応がすべての元凶なのか。

 

山田杏奈はこの映画でも無口で、目で訴え、そしてか弱いながらも耐え忍ぶ女の子を演じている。しかしそんな彼女が終盤で父親の仕打ちに対し、胸の底から声を張り上げて訴える場面は心に刺さるシーンでこの映画の見どころの一つだ。

山田杏奈のこういう表情がすごくいいのよね。。。。

 

また若い出演者の中で一番年上の森永悠希は若いのにキャリアがあり演技力も素晴らしい。彼が若い演者たちをぐいぐい引っ張って行っているように見える。

出演者は多くないが清水美沙、中島ひろ子、世良公則らが脇をしっかり固める。

 

沖縄問題をベースにしながらも、若者が音楽を通して何度も躓きながらも成長していく様が清々しい、心に残る青春映画だった。

 

リサを演じたトミコ・クレアという女優さんは日本人の母とアメリカ人の父を持つハイブリッド。ラストシーンでフェンス越しに3人の演奏を聴くシーンは感動もの。

とてもきれいな女の子でまた見てみたい。