生まれ変わりを題材にした長編小説がベースになっているが、正直な感想として結構複雑な内容を2時間ちょっとの枠に押し込むのは、少々無理があったかなと思った。

 

それでも大きく破綻することなく、ラストまで楽しませることができたのは一重に職人監督の廣木隆一の手腕によるところが大きいだろう。

さらに、廣木隆一と有村架純はこれまでも何度もタッグを組んでおり、お互いのことをよく理解した間柄だろうから、有村架純演じる瑠璃のキャラクター設定だとか、有村架純をどう撮ったら魅力的で美しいか、など二人の関係性から見どころはあった。

 

先に書いた通り、瑠璃の生まれ変わりは一度ではなく、二度、三度(原作では四回?)と生まれ変わり現世に現れるので、時系列と登場人物をきっちり把握しておかないと少々混乱する。できれば連続ドラマで丁寧に描きたかった作品である。

 

大泉洋演じる小山内とその妻・梢(柴咲コウ)、娘・瑠璃(菊池日菜子)との間の夫婦そして家族の愛、そしてオリジナル?の瑠璃を演じる有村架純と、三角役の目黒蓮との深い愛とが絡みってストーリーが進んでいくのだが、どちらの話にも心底入り込んでいけないのは、共に互いを思いやる深い愛情の物語なので、お腹いっぱいになってしまうからではなかろうか。

 

この映画では小山内が主人公なのだが、描きたかったラブストーリーは瑠璃と三角のお話なのか、はたまた小山内一家の愛の物語なのか。。。。

それぞれ観客が自分の立場から、のめりこむポイントを探して感動すればよいのか。。。。

最後までそこがわからず終わってしまった感じだった。

 

ただ個人的には、廣木隆一が撮る作品の女優は皆、魅力的だなという感想で彼に撮ってもらえる女優さんは幸せではなかろうかと感じる。

 

また映画では田中圭演じる正木(物語の展開に非常に重要な人物)の登場が、少々乱暴かつ唐突だったのが、更にのめりこみにくくさせてしまっていたかもしれない。

やはり2時間の尺で撮るにはちょっと無理のある原作だったのかも、と再認識した。

 

伊藤沙莉は本当に最近どこにでも出てくるが、どの作品に出てもしっかり彼女の役割を全うしているところが素晴らしい。どのような場面、役柄でもその作品の一つのピースにピタリとはまる役者はそんなにいない。それでいて埋没せず、伊藤沙莉の存在感は残す。

そういった女優さんなのだ。

 

安藤玉恵、寛一郎(正木役は彼にやってもらいたかったが、少々若いか)、浪岡一喜、戸田昌宏、淵上泰史が脇を固め、大女優・丘みつ子が小山内の母親役で出演。

 

有村架純ファンとしては、謎めいた大人の女性が持つ、心の奥のドロドロした複雑な感情を秘めた役柄は初めてだったので、新たな有村架純の魅力を見せてくれた点で良かったかな。

それを廣木隆一監督作品で演じることができたのは、ラッキーだったと思う。

 

それから柴咲コウは若い頃より魅力が増し増しで、この映画での梢役は本当に美しかった。

 

小山内の娘の瑠璃を演じた新人の菊池日菜子は注目の女優さん。

正統派美少女で今後の成長が楽しみ。