宮藤官九郎の脚本作品は、2011年の「11人もいる!」を以前観たが、あのドラマよりも一人一人のキャラの立たせ方が際立ってよかった。

 

ドラマの初回導入部から、ぐいっと物語に引き込まれていく。

なにせ、坂間正和役の岡田将生と、謎のレンタルおじさん・麻生役の吉田鋼太郎の二人の軽妙な会話がずるい。

そのままのスピード感で、10話一気に突っ走っていく。

このころのクドカンは本当に勢いがあったのだと思う。

(「あまちゃん」はじめ、ヒット作を連発していた)

 

キャストは豪華。主役の3人は今をときめく俳優陣。

岡田将生、松坂桃李、そして柳楽優弥。

 

岡田将生は正統派のイケメンでありながら、シリアスからコメディまでなんでも器用にこなしてしまう。このドラマでも岡田将生でなければ嘘くさく、ワザとらしくて見ていられないような坂間というゆとり世代の若者を、本当に自然に演じている。

将来は阿部寛のような役者になるのだろうか。本当に楽しみな一人。

 

山部役の松坂桃李もとてもよい味を出している。

女性に奥手で気の弱い教師役(しかも童貞)だが、どこか憎めない男だ。それというのも彼は常に3人の中でフラットなモノの見方で人に接し、素直に弱さを見せて生きているからかも。

子供に対する愛情にあふれた好青年は、松坂桃李のほっこりした雰囲気にぴったりだ。

 

道上まりぶという、3人の中では最もアウトローな男に柳楽優弥。

彼を初めて見た「アオイホノオ」の時の衝撃は忘れない。その後の「浅草キッド」や「ガンニバル」でも見せた、何かにとりつかれたように生きる男を演じたらこの人はすさまじい。

このドラマではそれらの役とは少し違ったタイプの男を演じているが、本当に人間臭い役者だと思う。

 

良い脚本を、水田伸生のテンポよい演出が更にグレードupさせている。

会話、場面の転換、ストーリーの進むスピード、それぞれが小気味よく飽きがこず、とはいってもお腹いっぱいにならないよう工夫が施されていて、これだけの個性的な役者を多数起用していながらしっかりまとまっているあたりさすが。

 

主役3人をしっかり支えているのが、宮下茜役の安藤サクラ。

彼女でないとこのドラマのヒロインは歯が立たないだろう。

あのしっかりした演技力が無いと周りの役者の演技の中に埋没してしまいかねない。

そうならないような実力者のキャスティング、これは素晴らしいと思う。

 

でんでん、手塚とおる、中田喜子、青木さやか、島崎遥香、吉岡里帆、小松和重、加藤諒、矢本悠馬、北村匠海、真野響子、平山浩行といった俳優さんたちも個性豊かなキャラ設定がされていて、ドラマの内容を濃くしている。

(古手川祐子はまりぶの母親役でちょっとだけ出演という贅沢)

 

そんな役者の中で特筆したいのは、石橋けい。

彼女、なんだか妙に色気ある役が多い気が。

童貞教師の山部を誘惑したりするのだが、フェロモンむんむんで困る 笑

 

それから茜の父親の辻萬長。佐賀弁がきれいな役者さん。ちゃんと佐賀弁をしっかり喋れる人をキャスティングするあたり憎い。こういったこだわりは大事だ。

 

そしてゆとり社員代表のような役の山岸を演じる仲野太賀。

このころはまだ太賀という芸名で、それほど有名ではなかったがこのドラマの演技でぐっと注目が集まったそう。

脇役にしておくには惜しいキャラの立ち方で、さすがこの演技を見たら埋もれる才能ではなかったことがわかる。

 

全編ほぼ笑い、笑い、のドラマではあるが最終話の神前結婚式のシーンは、クドカンらしくドタバタを上手く収れんさせつつホロリとさせる名場面だ。

 

特に、安藤サクラが式場まで親族とともに歩いていくシーン、日本の美しい伝統的な結婚式がそこにあり、情緒あるなあ、、、、と見入ってしまった。

教会での結婚式も良い、が色々準備が大変なのを差し引いてもこんな結婚式上げてみたい、と思った(もう無理だが、、、笑)