清原果耶 17歳の時の初時代劇。

17歳でNHK時代劇の主演、しかもこれがかなりしっかりした演技で魅せてくれる。

この前年に同じくNHKのあの名作「透明なゆりかご」で主演。

やはりこの娘は天才肌だと強く感じる。

 

目の動き、目の演技が本能的に上手い。

誰に教わるでもなく、その役になり切りその場その場で、どういった感情を表現すべきかを感覚的にわかっているのだろう。

現代劇のみならず、時代劇でもこれだけの演技ができるのだから末恐ろしい。

 

物語は時代劇の王道を行くストーリー。

葉室麟の原作が素晴らしいのだろう、プロットも非常によくできていて時代劇ファンならずとも楽しめる。

2話くらいまではゆったり話が流れ、大丈夫だろうか、、、と不安になったが3話目から話が動き出しその後は次回が楽しみな展開が続く。

 

元武家の娘の仇討ちのお話なのだが、奉公先のお家の家族との交流、町の人たちとの出会いと心の触れ合い、清原演じる主人公・菜々の人としての成長、そして武家の人間の本懐などがきめ細やかに描かれ、最後の仇討ちのシーンまで素直に物語に入り込める。

たった7話だが、まるで大河ドラマのような壮大さも感じさせ、短めの本格時代劇を楽しみたい人にはうってつけだ。

 

菜々の奉公先の主人、風早市之進に町田啓太。最近、「unknown」での軽い雑誌記者、古いが「女子的生活」のちゃらんぽらんだが筋の通ったサラリーマンなど、割と軽い役ばかり見ていたので、見目麗しい侍役は新鮮だった。

妻に谷村美月。MATTの中では志田未来や黒崎智花と並んで年齢不詳の美女で、好きなタイプ。このドラマでは、菜々の心の支えになる重要な役回り。

二人の子供もかわいい。

 

脇を固める俳優陣は、松尾諭、濱田マリ、石橋蓮司に宇梶剛士、奥貫薫と粒ぞろい。

刈谷俊介やイッセー尾形も渋い。

殿様役の中原丈雄はすっかり貫禄がついて、すばらしい。

本田博太郎の悪徳商人もはまり役。

 

何より、北村有起哉演じる奈々の敵役の轟平九郎が心憎いくらいの悪漢ぶりを披露していて、この男なら地の果てまで追いかけて、父の仇を討ちたいと思わせる。

だが、そんな轟も実は決して穏やかでない幼少期を過ごして今がある、という設定に作者の人を見る優しい目が垣間見える。

 

6話~7話にかけての菜々の決意、そしてそれがあったからこその最後の仇討ちシーンがあり、ラスト、もう見え見えの展開なのであるが、そこは時代劇、収まるところにきちんと収まりホロリ、の後に爽快感しか残らない。

 

それらも素晴らしい原作に脚本、そして何より幼いながら自分の信じる道を貫き通した武士の娘・菜々を可憐に演じ切った清原果耶の女優としての本領発揮のおかげか。

若干17歳(当時)の若手女優をもてはやし過ぎかもしれないが、彼女だからこそ、この菜々という役が生きたと感じている。

 

ずばりタイプの女優さん、南沢奈央は武家のお嬢様役で出演。

菜々とともに市之進に思いを寄せる雪江役。

 

市之進が雪江と菜々を評して、「鉢植えのきれいな花より、野に咲く蛍草の方が私は好きだ」と、暗に菜々を想う気持ちを伝えるシーンでタイトルの「蛍草」は印象的に使われていた。