もはや良質なドラマは民放には作り得ないのか。。。
このドラマもNHKである(番組改編でなくなった、かつての夜ドラ枠)。
昨今の民放ドラマはややネタ切れの感がある。警察、医療、法廷ものなどは食傷気味、恋愛ドラマもステレオタイプ。だから最近多いのは、今まで陽の当たらなかったマイナーな職業ものが多く目につく。
それはそれでよいのだが、やはり心に残るドラマにはなり得ないことが多い。
「恋せぬふたり」はテーマがユニークだ。
「アロマンティック・アセクシャル」という恋愛感情を抱かない無性愛者が主人公。
そういう志向の人がいると何かで読んだことはあったが、このドラマを観てそういった人たちの苦悩や生き方を知るきっかけになった。
いわゆる世間一般的な意味で「フツー」と言われる人からすると、LGBTよりもさらに理解されにくいのだろう。
主演は岸井ゆきの。
最近彼女の演技を集中して見ているが、先週見た「ケイコ目を澄ませて」で、彼女の魅力にほれぼれしてしまった。
このドラマ、30分x8回と短いがその中で難しい役柄を表現豊かに演じていて、まるで本当に彼女自身無性愛者に見えてくる、そういった自然な演技ができる女優さんだ。
共演の高橋一生もさすがである。
社会から少しはみ出てしまったような役から、今回のようなちょっとどこか超越したような役までなんでもこなしてしまう実力派。
そんな二人の実力派がそろった見ごたえある一品だった。
「男女は恋愛とセックスを通じ結びつくものだ」というのを当たり前に刷り込まれて生きて来たものにとっては、そうではない人たちを理解することは不可能に近い。
だけど、不思議なことにドラマの中の咲子(岸井ゆきの)と羽(さとる・高橋一生)の二人は、とても幸せそうだ。
それは、彼らが肉体に対する欲望や他者への愛情や恋心、嫉妬に縛られない自由を持っているからである。
「フツーの人たち」から見ると、それは「可哀そう」に見えるかもしれないが、それは自らの価値観と生きる世界の常識があるから。
それらをいったんかなぐり捨てて見てみると、そこには違った世界と幸せがある。
咲子の両親に小市慢太郎と西田尚美。
妹役は北香那。彼女もいつも脇役ながらピリッと存在感ある演技で魅せてくれる。
1時間枠の連続ドラマの主演も近いうちに実現するのでは、と思う。
小島藤子も同様にこのドラマでは重要な役回り。そして菊池亜希子も羽(さとる)の元カノ役で出演。彼女は「問題のあるレストラン」でも非常に印象深い演技で記憶に残っている。
最終話での二人の人生の選択はスッキリとした。
「アロマンティック・アセクシャル」の二人だからこそ選べた幸せ。
お互いを思いやる気持ちは純粋で、これが本当の愛だとしたら我々「フツーの人」の愛ってなんなのだろう。
ラストシーン、咲子のモノローグ。
自分の幸せを決めるのは自分だけ、自分が幸せになることが一番大事だという決意が語られる。自分のことしか考えていない、というのではない。
他者の目を気にして、他人の干渉に苦しめられることが多い閉塞感漂う今の日本。
そんな中で、咲子の決意こそが幸せを手に入れるために大切なことなのかもしれない。
自らが自分の意思で選んだ幸せをつかむことこそ、人生を豊かにする。そしてそれは誰にも邪魔されるものではない。
色々と考えさせてくれる、素晴らしいドラマだった。
こういうドラマがまだまだある。
MATTのドラマ探しの旅はこれからも続いていく。
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