岸井ゆきのという、実力派の俳優さんが出ていて評価も高かったので見てみた。

主人公は実在の人物で、耳が聞こえない女性ボクサー。

 

ボクシングといえば、昔会社の先輩で作新学院のボクシング部で国体選手だったクボさんの言葉が懐かしい。

「ボクシングやったことあるやつは、ファイティングポーズとらせたらすぐわかる。シロートは脇があいてるのよ」と言っていた。

劇中でも「脇を締めろ」という言葉が飛び交う。

ゴルフもボクシングも脇を締める、というのは大事なのだ。

 

耳が聞こえない、というだけですでに社会的には孤独な存在なのに、ボクシングというまた孤独なスポーツに挑戦する主人公の強さに感銘を受ける。

 

岸井ゆきの演じるケイコは実直に素直に、ボクシングに向き合っていく。

あまりに実直すぎるので、他者とコミュニケーションがうまく取れない。

そんな自分を弟は強い、というが本人はそうは思っていない。

自分は強いわけではなく、他者との距離感が上手く取れないだけなのだ。

 

そんな彼女だから生活の中でも色々なストレスを抱えることになる。

そして、それが頂点に達するのが「ジムの閉鎖」。

唯一のよりどころだったジムの閉鎖を知り、自暴自棄になってしまうケイコ。

 

そんなケイコを周囲は暖かく見守ってくれる。

とりわけ三浦友和演じるジムの会長は、ケイコのことをずっと見守り支えてくれた。

そんな会長の期待と優しさに応えるため、闘う気持ちを取り戻したケイコはリングに戻る。

病気に臥せった会長や仲間、家族が見守るなか久しぶりの公式戦に臨むが惜しくもKO負けしてしまう。

 

試合からしばらく経って河原に佇むケイコに、たまたま居合わせた対戦相手が声をかけ礼を言う。その姿に嬉しさと悔しさと、いろんな複雑な感情を含んだ表情を見せるケイコ。

 

劇中、小さな「はい」以外まったくセリフの無い岸井ゆきのだが、このラストシーンの複雑な表情が見事だった。

彼女の演技力の確かさが凝縮された素晴らしいシーン。よい映画になっている。

 

三浦友和をはじめ、仙道敦子、三浦誠巳、中島ひろ子、渡辺真起子、中村優子ら、いい俳優さんたちがそろっている。

ケイコの弟役の佐藤緋美は、SUMIREの弟(浅野忠信とCHARAの息子)だ。

 

荒川の美しい風景が劇中たびたび映し出されるが、MATTも19年間、木津川、淀川などに囲まれて育ったので、大きな川のある風景はMATTの原風景かもしれない。

懐かしい感じで観ることができた。