金城一紀の脚本ドラマはどれも秀逸だ。
物語の設定、世界観、展開、エンタメ、好きな脚本家の一人。
「BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係」、「奥様は、取り扱い注意」など外れ無しだし、「SP 警視庁警備部警護課第四係」も見ていないが、評判を見ている限り間違いないだろう。
今回も警察組織と国家権力をベースに、個性豊かなキャストと派手で切れのあるアクション、小気味よいテンポの脚本で楽しめる一品になっている。
公安機動捜査特捜班の5人の顔ぶれは、ナイスキャストだ。
小栗旬は「BORDER」に続いてキレキレのアクションでかっこいい。
西島秀俊も「奥様は、取り扱い注意」と同様、格闘マシンのいでたち。
新木優子は「SUITS/スーツ」を先に観ていて、きゅっと締まった口元が印象的な美人で、気になっていた女優さん。
野間口徹は金城作品の常連。田中哲司は体格もよく「刑事七人」の高島政宏のように頼りになる上司を好演。
ドラマは一作目から派手な展開と、5人のキャストの個性に引き込まれる。様々なエピソードで楽しめるがあの世間を騒然とさせた某新興宗教教団をモデルにしたと思われる話では、内部に潜入しスパイ活動を行う協力者の役を眞島秀和が好演している。
公安の協力者というと「外事警察」を思い出す。
NHKのドラマ版では渡部篤郎の協力者だった外国人・ニケは組織に正体を暴かれ、悲惨な結末を迎える。そんな恐ろしい世界なので、このドラマでも最後までドキドキしながら物語の行方を追った。
国家権力の闇と搾取される弱い人たち、がこのドラマの芯である。
国家という正体の見えない存在の前では無力な個人。
それぞれの過去に傷を持った5人を集めて組織化したのが、警察庁警備局長の長塚京三演じる鍛冶だ。
警備局長という警察組織の中でも最も重要なポストにおり、冷徹かつ狡猾。
岸部一徳や石橋凌が得意とする役柄だが、このドラマでの長塚京三は、正直言って得体のしれない恐怖を感じる。
それくらい彼の演技に凄みがあり、このドラマは彼がいて全体がピリッと締まる。
そして飯田基祐演じる警視庁公安総務課長もなかなか食えない。
この二人、特捜班を利用するだけの国家権力側の敵なのか、はたまた理解者なのかよくわからないというのが、また謎を深め物語を面白くしている。
だが、Episode9、10で出演の総理大臣役の竜雷太、実はこの男が一番の悪で、彼に比べたら長塚京三が良い人に見えてしまうのがなんとも後味悪い。
石田ゆり子が協力者の妻役で、西島秀俊と微妙な関係になるのだがこの二人は「MOZU」では夫婦役。西島秀俊のあのストイックな雰囲気は公安刑事にぴったりなのだ。
2017年の本放送時はそこそこいい視聴率で続編にも期待があったのに、その後音沙汰ないのは、さすがに物語がハードコア過ぎたからだろうか。
MATTのような男性視聴者にはよかったものの、女性受けする内容ではない。
小栗旬、西島秀俊といった人気イケメン俳優を立てても、ちょっとな、、、ということか。
10話で完結しているが、ラストのエピソードはあと2話使って丁寧に作ってほしかったな、、、というところだけ残念ポイント。
でも警察ドラマとしては、さすが金城一紀と納得の作品だった。おすすめだ。
二人が特殊警棒をシャキーン!と取り出すシーン、かっこいいです。