人気作家「燃え殻」題材のドラマは「すべて忘れてしまうから」「あなたに聴かせたい歌があるんだ」と見てきたが、どの作品も妙に心に残るお話だった。
原作は読んではいないものの、映像作品でもこれだけぐっとくるのは、きっといい小説なのだろう。
この映画では、音楽、その時代のカルチャーを効果的に取り入れ、主人公の佐藤(森山未來)とかおり(伊藤沙莉)の出会いから別れまで、二人の生きてきた軌跡を描いていく。
時間軸を現在から過去にたどっていく手法は、最近では「ちょっと思い出しただけ」があった。こちらも伊藤沙莉が出ていたっけ。
劇中の時代設定がちょうど90年代前半から現代につながっているので、MATTら50代世代には当時のことが蘇り、自分の歴史を重ね合わせて見てしまうかもしれない。
ポケベルから携帯へ、そしてスマホに。タバコは電子タバコへと変わり、カルチャーもTV時代からインターネットへ。。。
佐藤とかおりがデートに使う車も日産・パオ。これは今ではカルト的人気になっているパイクカー。3ドアでキャンバストップ。今だからこそイケてると思えるデザイン。いい車だ、、、、
話が逸れた。
なんとなく、だが「燃え殻」の作品に出てくる女性はみんな強い。
一人の男に依存し過ぎない。
いや、逆に過去をひきずり、今に目を向けようとしない男が弱すぎるのか。
子供の頃思い描いていた「大人」って、今となってはどんな存在だったのか思い出せない。自分はどんな「大人」になろうとしていたのだろうか。
「大人」の存在は子供が知らない世界で生きていくことができる、遠い存在に感じていたのかもしれない。いつかは自分も大人になるのだ、と。
でも人生を生きてきて大人と言われる年になってもなお、日々の些細なことに振り回され、思い描いたようには生きられず、過去ばかりを見てしまう。
ラストシーンで、自分のこれまでの人生を辿るように疾走する佐藤を見ていて思うのは、MATTも大人になれなかったのかもしれない、ということだ。
この映画の伊藤沙莉はとても良かった。彼女の魅力が存分に楽しめると思う。
森山未來は、ちょっと内省的な役をやったらこの人の右に出る者はいない、というくらいに上手い。
多数、いい役者さんが出ているが、中でも奥野瑛太や萩原聖人、東出昌大に大島優子など、ちょっとの出演でも上手い役者にかかると記憶に残る演技になる。
SUMIREは、やはりその雰囲気からこの作品でもちょっと癖の強いキャスティングだったものの、初めて彼女のロングヘアを見て、かなりイケてると感じた。まだまだ色々な役が期待できそうだ。
それから渡辺大知と徳永えりがクレジットに載っていたが、どこに出ているか気づけず、、、
ネットでググると、なんと本当にちょい役。
佐藤とかおりが着ていた服と同じ服を着たカップルが一瞬映るのだが、その二人。
この二人、「恋のツキ」、「有村架純の撮休」でもカップル役。監督の森義仁は「恋のツキ」を撮っていた。と言うことは、このカップルは、、、と妄想が広がる。
3回も別の作品でカップル役とは、もう結婚してしまえ!笑
劇中、数々の懐かしい楽曲が使われているが、エンディングテーマがとてもいい曲でこの作品の世界観にマッチしている。気に入って買ってしまった。
「燃え殻」by馬の骨。
2005年の曲で、あの「イカ天」で出て来たバンドの曲らしい。う~む、知らなかった。
まだまだ自分の知らないところにいい楽曲があるのだ、と思うと嬉しくなる。
「燃え殻」原作の映像化作品では「すべて忘れてしまうから」の次に好きな作品となった。
伊藤沙莉の初々しいベッドシーンも見どころです。。。。。