これ、いま流行りのお料理をネタにしたドラマだと思い、何気なく見始めたドラマだった。
が、ちょっとヒネリが効いていて、とてもよい作品だった。
主人公のジュン(市川実日子)とヨシヲ(中島歩)の二人が料理を一緒に作り、何気ない日常の話題を楽しそうに語り合う、そんなお話。
ただ、ドラマの中で二人が作る料理が面白い。
ジュンの勤める大学の教授が教えてくれる、歴史上の料理のレシピをもとに現代風にアレンジしているのだ。
古代ヨーロッパの人たちが食べていた料理は、名前や材料こそ見たことも聞いたこともないものが多いが、それらは長い時を経て我々現代人が日常口にしている料理と何ら変わらないものがほとんどだ。
脈々と流れる時間は今につながっているし、自分の生まれる前に確かに人々が生活していて、我々と同じようなことを考えて、食べて、生きていたということを実感できる。
ジュンとヨシヲが毎回楽しそうに料理をする姿がほほえましい。
買い物に行ったり、今日あったことを話したり、一緒に昔の人の生活に思いを馳せながら食事したり、、、、本当に仲のいい夫婦だ。
ロハス、スローライフ、、、、そんなワードにしてしまうと陳腐だが、二人を見ていると理想の夫婦に思える。
市川実日子のちょっとアンニュイな雰囲気と、中島歩の独特の語り口が心地よい。
この二人、本当の夫婦に見えるのも相性なのか、二人の演技力のなせる業なのか。
ちなみに中島歩は国木田独歩の玄孫なのだとか。だからか何やら文学的な香りがする俳優さんだ。
映像の美しさや、部屋の装飾が華美ではなく知性とモダンさを感じさせる点など、見るべきところは多々あるが、料理以外での見どころはジュンとヨシヲの会話と、ゲストで出てくる安奈淳演じる叔母や、神野美鈴演じる大学教授らとの洒脱な会話も楽しい。
仲がいい二人だが順風満帆でもないようだ。途中二人の気持ちがすれ違ったりすることもあるが、最後にジュンはヨシヲとの生活をかけがえないものだと再認識する。
少しほっとした。
芋生悠も3話でゲスト出演。哲学を専攻する学生役で量子力学の話をする回は、なかなか面白かった。
各話でいろいろ歴史の勉強ができてしまうが、あらためて思うのはヨーロッパ文明だからこそできたこの番組、ということだろう。
文明が栄えていたヨーロッパの文明だからこそ、豊かな食材とお料理が実現できていた。
同じことを日本の歴史から学ぼう、、、という番組にしたら、アワとヒエしか食べられないかもしれない、、、、そんなことはないか。
音楽はベンジャミン・ペドゥサック。「名建築で昼食を」でも音楽を担当。
このドラマの雰囲気にぴったりで、センス良い選曲といえよう。
3話に芋生悠ちゃんがゲスト出演。もっと出てきてほしかったが、、、、