バカリズムの脚本ドラマは「殺意の道程」で初めて出会い、この作品が2作目。
既成概念にとらわれず、自由な発想で実験的ともいえるドラマを作り続けている。
こうなったら、彼の作品をもっと見てみたくなる。まずは「架空OL日記」あたりか。
安藤サクラ主演だが、実力者の彼女に木南晴夏、夏帆、そして水川あさみとこれまた実力派女優が競演。なんとも豪華だが、彼女たちなくしてバカリズムのこの脚本は成立しえなかった。
なにせ、ドラマの7割くらいはどうでもよい会話とその心象風景に終始するからだ。
だが、このドラマの真骨頂はその「どうでもよい」部分にほかならない。
地方に住む幼馴染たちの何気ない日常。
ただ何気ない日常は、バカリズムの徹底的なこだわりぶりで微に入り細に至るまで非常に緻密に描かれている。気を抜いて観ていると気づかないような描写もあり、後で見返してああ、そうだったのか、と気づかされたり。
ストーリーはタイムリープもので、何気ない日常を描きながらも実のところは非日常的な展開。主人公の安藤サクラ演じる近藤麻美は、人生5周も生きている。
5回とも同じ人生を歩む(実際は職業や学校は毎回変わっていくが)って、正直地獄ではないかと思う。人生やり直しできるってことは夢のような話だろうが、先の読める人生ってやはり面白くない。
このドラマでもう一つの見どころは、麻美と3人の同級生の友情だ。
それも地元愛に満ち溢れた、地元の仲間との生活と人生。
19歳で大阪を離れてほぼ帰っていないMATTにとっては、地元で働いたり、地元の同級生と長く付き合ったりという人生は、うらやましいと感じる。
変化を求めて大阪を離れたのだけど、変わらないものの尊さをこの年になって感じている。
年齢設定からおそらく30代半ばから後半くらいの視聴者が「ああ、あったあった」と共感できる文化や習慣がちりばめられており、毎回のエンディングテーマはまさにその証で90年代前半から2000年代までの懐かしい曲が選曲されている。
このドラマも贅沢にキャスティングされているが、三浦透子がいきなり1話で地味な役で出てくる。まさかこれで終わり?と思いきや、後半から最終話にかけてまさかの重要な役回り。個性派の面目躍如。
同じく黒木華も同様。彼女もまたエキセントリックな役柄で魅了してくれる。
松坂桃李もさほど重要ではない役で、贅沢な登場。でもかなり笑える設定。
鈴木浩介や野間口徹、山田真歩、江口のり子、そして神保悟志らのキャスティングもエッジが効いていてよい。
それから麻美の妹、遥役の志田未来。
最近バイプレイヤーとしての彼女を見ることが多いけど、毎度存在感を感じさせる演技を見せてくれる。重要な役からそうでもない役までなんでもこなすいい女優さんだ。
変わらず可愛いのだけど、熱のこもった演技も〇ないい女優さん。
それにしても木南晴夏、夏帆、安藤サクラの3人の息の合ったガールズトークは必見だ。こういった細かなところの演技が上手い3人だからこそ、ただだらだらと続くなんでもない会話も、軽妙に聞こえて楽しむことができる。結果、ドラマとして立派に成立しているのだ。
この点もバカリズムの緻密な計算によって成り立っているのかもしれない。
やり直しのきく人生。それはこのドラマで描かれたように長くしんどいものなのかもしれない。
やり直しがきかないからこそ、人生って楽しい。
ブラッシュアップライフを観て、人生を振り返りあれやこれや思い返し、ああすればよかった、こうなっていたのかも、などと想像するだけでいい、と感じた。
振り返り、というとこのドラマ、伏線がいっぱいあるようで、もう一度見返すと新たな発見があって更に楽しめるのかもしれない。。。。