正直このドラマを観てほっとした。

門脇麦が、天才ヴァイオリニストの役ということだったので、またキャラの立った役なのかと心配していたのだが、実際には極めて「ふつうの女の子」を演じていて、またそれがものすごく良かったからである。

 

彼女はこれまで数々の話題作に出演してきたけど、まあ、なんともエキセントリックな役ばかりで、更にそれらが評価されていたので、果たして普通の女の子の役ができるのか・・・と心配していた。

 

だが、この作品での彼女はとてもキュートで、田中圭演じる常盤朝日の前で見せるぶりっ子ぶりも、嫌みが無く素直に可愛いといえる。

それでいて、天才音楽家が持ちうる特殊性も包括しながら、音楽に、恋に悩む一人の女性を好演している。門脇麦が、エキセントリックから普通まで幅広く演じることができる女優さんだ、ということが証明された。

 

「エール」「最愛」の脚本などでも評価の高い清水友佳子の脚本もよい。

物語は導入部から中盤、そしてクライマックスに至るまで、次の週が楽しみになる仕掛けがふんだんに盛り込まれ、特に最終話は二転三転の末、感動のフィナーレへ怒涛の如く突き進む。

常盤と初音(門脇麦)の恋の行方がどうなるかも注目の一つだったが、最後に常盤が初音の手を取って歩き出すシーンは、二人の程よい距離感が表現されていてこれまた感動のワンシーンだった。

 

キャスティングも素晴らしい。

こじらせ女子を演じたらNo1の瀧内公美がチェロ。フルートに坂東龍汰。WOWOW版「ソロモンの偽証」での大出役がよかった若手実力者。渋川清彦、濱田マリ、平田満、前野朋哉ががっちり脇を固める。

 

岡部たかしは珍しく良い人役で好演。一方でいい人役がお似合いの津田健次郎が嫌みな市議の役に。この二人を逆転して配置したのはよい演出。

恒松祐里は門脇麦の妹役だが、彼女もまたキュートな演技で華を添えている。

 

田中圭はこのドラマでも相変わらずの「ツンデレ王子」ぶりを発揮している。あまり好きな役者さんではなかったが、本作の常盤朝日役は、抑えた演技のせいもあり好感が持てた。

 

ただ、この作品で一番イケメンぶりを発揮していたのは、永山絢斗の父親役の加藤雅也。

二人とも一流音楽家の親子という設定だが、加藤雅也演じる父がかっこよい

他人の評価に悩む息子に対し、自分の音楽を楽しむことの大切さを身をもって教える父。

なんとも素敵な父親で、こういうのをマジイケメンというのだろう。

 

 

劇中のオケは、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の演奏ということで素晴らしい演奏を毎回聴くことができうれしい限り。

チャイコフスキー交響曲第5番とか、エルガーの威風堂々とか馴染みのある曲がセレクトされていてオケを聴くだけでも楽しいドラマだった。

 

テンポよい展開に、個性的な団員とオーケストラの再生物語。

ベタな内容になりがちな素材を、良質な脚本と絶妙なキャスティングで素晴らしいドラマに仕立て上げられた一品でした。