1/2シーズン通して16話という、日本のドラマの中では大作。
50代以上にはなじみ深い村西とおるの破天荒な生き様を描いたこの作品。
タイトルからイメージしたソフトなストーリーではなく、AV業界の歴史、裏社会とのかかわりなど結構ハードで、NETFLIXで世界配信を狙って作っただけあり、クオリティの高いドラマになっている。
何と言っても、多くの有名AV女優(今はセクシー女優って言うのだっけ?)が出演していながら、彼女らはほとんど画面で目立たず、黒木香を熱演した森田望智や、印象的なAV女優の奈緒子を演じた冨手麻妙、階戸瑠季(惜しくも若くして他界)、そして恒松祐里ら普段TVで見かける女優さんたちが惜しげもなく裸体をさらし、ベッドシーンを演じているのに女優魂を感じた。
このドラマ、AV業界の歴史をたどりながらも、その実、質の良い青春ドラマに仕上がっている。「究極のエロ」を追求することだけに猛進し、あふれるアイデアと強烈なリーダーシップで時代を作っていく村西とおる(山田孝之)。
同じくエロにとことんこだわる人生をモットーとしつつも、オタクで村西とは対極にいるような人間・川田(玉山鉄二)。二人はともに認め合いながらエロを極めていくのだが、途中少しずつ歯車が狂いだし互いに距離を置くようになる。
だが、最後には真摯にエロを追求していった川田が夢をかなえ、周囲が見えなくなり自分の世界にどんどん入り込んでいった村西は道を外し破滅の道を歩んでいく。
ここにチンピラ崩れのトシ(満島真之介)が絡んで、極上の青春譚ができあがっている。
山田孝之の熱演を差し置いて、玉山、満島の二人の演者が素晴らしい。
これだけの大作を仕上げたスタッフの熱意もさることながら、この3人の熱演なくして、この素晴らしいドラマは完成しえなかったろう。
そのほかにも多数の有名俳優・女優が脇を固める贅沢な布陣。
リリー・フランキー、国村隼、柄本時生、ピエール瀧に石橋凌。
シーズン2では吉田栄作や笠松将、渡辺大知、伊原剛志、室井滋、MEGUMI、西内まりやが好演。
そのほかにもちょい役で名優、名わき役が多数。
リリー・フランキーは「アウトレイジ」の小日向文世よろしく、このドラマで一番悪い奴だった。悪徳警官ってのが、おそらくこの世で一番悪いやつなのだろう。
時代は昭和。出てくる文化や小物がどれも懐かしい。
車(よく旧車をあれだけ集めたなと感心)、マックシェイク(最近見ないが、、、)、衛星電話、レンタルビデオ屋に衛星放送、、、、
昭和50年代~バブルにかけての時代は、今の若い人から見ると魑魅魍魎が跋扈する、得体のしれない世界に見えるかもしれない。
今、「アウト」なものがすべて(本当にすべて)OKだった時代。
いい意味で「自由だった」が、その反面闇も今以上に深かったかもしれない。
エロというのはどんなにきれいごとを言っても、人間であれば隠し切れないものだ。
性欲は食欲と並んで人間の欲求の根源であり、誰もが持つ普遍的な欲望だ。
だから、このドラマで描かれていることは全て真実であり、嘘がない。
だからこそ、村西とおるや川田の生き方がすっと心に入ってきて、共感できるのだろう。
山田孝之演じる村西や、森田望智の黒木の激似の演技ばかりに目を向けてしまうのはもったいない。猥雑で混沌として時代を表現した絵づくりや、エロという表社会では蔑まれてしまう業界で必死に生きた女優やスタッフたちの青春譚、というのがこのドラマの魅力なのだ。
それに加えて日本のポルノ、AV業界がどう変わっていったか、そこに村西が果たした役割はなんだったのか、という文化的な側面で観るのも面白い。
多様な映像表現を持つ日本だからこそ、AVの進化も必然だったのかもしれない。
最後に、主題歌の「MY WISH」がとてもよい。
配信されていないようなので、できれば買えるようにしてもらいたい。。。