これも観たかった映画。
永野芽郁は「半分、青い。」でフレッシュな女優さんが出て来たと注目。
その永野と同じく「半分、青い。」で共演し、今、脂が乗り切っている奈緒が共演とあれば、観たくなるのも無理はない。
永野芽郁は、「半分、青い。」で本格ブレークしてから注目を集めているが、その後の「3年A組‐今から皆さんは人質です‐」で、この子、この感じのまま女優として生きていくとしたら、大丈夫かな。。。と少し不安になったのを覚えている。
でも、その後の「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」で、戸田恵梨香と息の合った演技を見せて、かつ感情の細やかな変化を表現する力が素晴らしいと思い、やっぱり実力のある女優さんだとあらためて感じた。
この映画はそんな伸び盛りの永野芽郁と、今や表現者として若手随一の奈緒の魂のぶつかり合いのような作品。
おそらくだが、この作品は長く人生を生きて様々な経験をしたそれなりの大人か、人生経験は短くとも自分の中で消化しきれない苦しみを持って生きている人には、ぐっとくるものがあるのではないだろうか。
永野芽郁演じるシイノはとにかく柄が悪い。態度も悪い。
が、大切に思う人を守りたいという気持ちは素直でまっすぐ。
一方の奈緒演じるマリコは、不幸な境遇に生まれ、虐げられて生きていかざるを得ない弱い存在。
そんな二人の切ない友情にフォーカスし余計なものは極力排除して、物語は進んでいく。
自分に何も言わずに死んでしまったマリコの家に行き、遺骨を親から強奪し、そのまま逃走、生前マリコが行きたいと言っていた岬に行くため、会社も無断欠勤し飛び出す。
ここからこの作品はロードムービーとなる。
途中、ひったくりに会って無一文になったり、見知らぬ男に助けられたり(窪田正孝が好演)、やけっぱちになり自分も自殺しそうになったりと、滅茶苦茶、自暴自棄、破天荒の嵐なのだが、愛するものに何も告げられずにこの世を去られ、残されたものの虚しさを、永野芽郁は精いっぱい演じていた。
それは経験したものにしかわからない孤独感と、やりきれなさだ。
自棄になり放浪するシイノに完全になり切っていた永野芽郁は素晴らしかった。
マリコは回想シーンで出てくるのみなのだが、奈緒も弱く脆い女性を絶妙に演じ切っている。
どこかこの世のものでないような表情をするのが非常に上手な役者さんだが、ここでもその実力は折り紙付きだったと思う。
ラストシーンで、ひょんなことから実はマリコがシイノに手紙を残していたのを知る。
その手紙を読んで、この映画の中で一番の笑顔を見せるシイノ。
その内容は伏せられたままなので、何が書かれているかわからない。
だが、それは永野演じるシイノのこぼれるような笑顔だけで十分ではないか、と思うのだ。
人間の弱い部分を生々しく演じ切った奈緒、素晴らしい女優さんです。