土村芳がゲスト出演している、というだけで選んだのだが、想像していた以上に良いドラマだった。
このドラマの原作者の「レンタルなんもしない人」のことは知ってはいたものの、このドラマで彼の世界観や生き様をよく理解できた。
理解はしたが共感できるか、というと微妙だ。
やはり、何かをしないと生きていけない世界で、何かをしてきて、自分の存在価値を外部に求めて来た普通の人間には違った世界の人、としか感じられないだろう。
けれど、だからと言って彼の生き方を否定はしないし、する権利もそのつもりもない。
むしろ色々な生き方がある中で、もっとも難しい生き方にチャレンジしている(本人はそのつもりないかもだが)彼を、見守っていたいくらいだ。
ドラマは12話で、彼が経験した依頼内容がベースになっている。
主演の増田貴久は、まさに何もしないのがいい演技となっている。これでいいのだろう。
ネットの記事を読む限り、原作者よりもぶっきらぼうな感じに見える。本人はもっと気さくな感じだとか。
奥さん役の比嘉愛未がとてもよい。
こんな菩薩様のような奥さん、素敵だが本当にいるのだろうか。それはともかく比嘉愛未の柔らかい感じがナイスキャストだ。
古舘寛治演じる変なオッサンがちょいちょい絡んでくるが、彼はここ数年で欠かせないバイプレイヤーになってきた。「コタキ兄弟と四苦八苦」はそんな彼の魅力を存分に楽しめるドラマだろう。
一話目からゲストに実力派の志田未来、岡山天音、福原遥、山口紗弥香と続く。
志田未来は、好きな女優さんなのだけど、彼女は上手すぎてバイプレイヤーにはもったいない。だが、主役には使いづらいのか。なんにしてももったいない女優さんだ。
3話の福原遥が妙にかわいい。これはずる過ぎるほどかわいいので必見。
彼女はいつまで経ってもMATTの中ではまいんちゃんではなく、しまりん(ゆるキャン△)なのだが、、、、笑 彼女は声と語り口がとてもいいのよね。
5話で沙紀(比嘉愛未)の両親の小木茂光、大島さと子が登場。娘とその配偶者である将太(増田貴久)に理解ある両親で、こういった親もまた世間的には珍しい存在である。
でも、親は子供とはいつかこういう関係にならないといけないのかもしれない。
いつまでも子を思う気持ちは変わらないのだけど、お互いに大人の関係になることで、より良い関係性が続いていくのではないか、と思う。
このドラマ、6話以降12話までが肝である。
それぞれのエピソードで人生を考えさせられる。
6話は徳永えり。さすがの演技力にいつも脱帽である。
子育てに奮闘するお母さん役。なんてことないセリフ、仕草が妙にリアルで彼女のおかげでこのエピソードは心に残るものになった。
彼女の主演ドラマ、もっと観たいんだけどなあ。。。。
7話の西岡徳馬もさすがベテランの技。一見気難しそうな昭和の男だけど、乱暴で自己中心的に見えるその内側に、優しさがあふれている、そんな人間臭さをさらっと演じるあたりが憎い。
8話は松尾諭。彼はこういったダメな男から、「シン・ゴジラ」などで見せるピシッとした役まで演技の幅が広い。でも「拾われた男」での彼が本当なのだとしたら、この役はぴったりで、だからか妙に共感できた。
9話はMATTの中では神回だ。
土村芳と古川琴音という実力派の共演。二人はLGBTカップルなのだが、二人のお互いを思う気持ちや行動がとても魅力的で、この二人のエピソードだけで一つドラマが作れそうな勢いだった。
土村芳のナチュラルと古川琴音のエキセントリックが絶妙。素晴らしい。
二人ともほんと素敵です。
10話の磯村勇斗のエピソードは重すぎる。。。でも世の中にはこういった心を許している人、そうでない人どちらにも、とても言えないことを抱えている人はいる。
このエピソードで初めて、「レンタルなんもしない人」の存在価値を理解できた気がする。
11話はこのドラマで冒頭からずっとサイドストーリーで出演している葉山奨之のエピソードが最高潮に達する。
彼の「透明なゆりかご」での演技もよかったが、その2年後のこのドラマでは彼の持つ内面のモヤモヤが爆発寸前~爆発する、という危うさに磨きがかかったような気がした。
表現力豊かな役者さんで、とても注目している。
11話での葉山奨之演じる神林と、将太の対峙がこのドラマのクライマックスだろう。
神林がぶちまけた本音は、おそらく一般の人たちの本音だろう。
だが、将太の言った神林たち普通の人たちの生き方を肯定することばこそ、他者の生き方や存在を理解しあうことの大切さを物語っている。
このドラマの描きたかったテーマが、この11話にあるのだと感じた。
12話の松本若菜のエピソードは泣けた。前原滉演じる恋人を思う優しさと、その一途さは彼女の柔和な外見と相まって悲しい恋物語として最終話にふさわしい仕上がり。
ラストシーンで唐沢寿明が唐突に出てくるのもサプライズで良い。
このドラマでの松本若菜、素敵でした。