柳楽優弥、有村架純、三浦春馬という豪華キャスティング。
さらに、田中裕子、国村隼、イッセー尾形とさすがNHK。
ドラマや映画を料理に例えると、これだけの素材がそろったのだから、あとはシェフ(監督)、調理法(脚本・演出)次第ということだろう。
映画版もあるらしいが今回観たのはドラマ版。
終戦間近の旧京都帝大を舞台に、柳楽優弥演じる若き物理学者が原子爆弾の開発研究を通して、科学、戦争、国家、人間の生きざま、その幸せとは、、、を見つめていく。
柳楽優弥はここでも素晴らしい演技で、ほんとに科学オタクの研究者にしか見えない。
三浦春馬の死を覚悟した目も、田中裕子の凛とした昭和の女性像も、そして有村架純の可憐ながら強い意思を持って生きる姿、どれも見どころだ。
出演者の多くは関西出身で、劇中の関西弁は問題なかった。
大阪生まれのMATTは、どうしても関西弁が変だと気になってしまう。
有村架純の関西弁、いいね。
宇野祥平、尾上寛之、渡辺大知、葉山奨之、奥野瑛太と実力者そろい。
土居志央梨は、ドラマ版はセリフが一つもない役だが、セリフが無い分ぐっとくるエピソードに華を添えている。
戦争や原子爆弾のことばかり考えている修(柳楽)、裕之(三浦)の兄弟に、世津(有村)は、「戦争の終わった後の未来のことを考えよう」とぴしゃり、と言い放つ。
女性は強い。そして現実的だ。
劇中でもエネルギー獲得の争いが、戦争につながったと言っている。
科学に没頭し、次第に狂気に走っていくのはアメリカだけではなく日本も同じだった。
広島と長崎に原爆が落とされたのは、先にゴールにたどり着いたかどうかの差に過ぎなかった。
物語の最後に、世津の語りが心に残る。
日本は、世界はどうなっていますか?平和ですか?
多くの尊い犠牲のもとに残された日本という国で、我々はその問いに対して何と答えられるのか、、、、、
毎年8月になるとこういった番組が放送されて、普段考えない戦争や平和について思いを馳せるということができるのは、良いことだと思う。
反面、戦後ほぼ80年が経とうとしている。
当時戦争を経験した人がだんだんいなくなっている現実を思うと、気持ちは穏やかではない。
三浦春馬はこのドラマ公開前に死去。
劇中、海に身投げしようとするシーンがあるが、鬼気迫った演技なのはすでにこのころ、、、と思わずにはいられない。