色々書きたくなる、それだけ面白いドラマだった。

 

2018年1月放送。ネットでもたくさん書かれている通り、このドラマの1話で描かれたMERSによる騒動は、その後の新型コロナ感染症の状況をまるで予見したかのような描写で話題になった。

脚本は「MIU404」や「コタキ兄弟と四苦八苦」などの野木亜希子。

最近漫画や小説の原作が多い中、オリジナル脚本というのは貴重だ。

 

ドラマは法医学の現場を、架空の施設が舞台となり描かれる。

一般人にはあまり馴染みのない法医学というものを、易しくわかりやすく伝えているのは嬉しい。学生時代に法医学の権威・上野正彦先生のベストセラー「死体は語る」を読んで感銘を受けた。もしMATTが医学部志望だったら法医学者になっていたかもしれない。

もちろん、そんななことはなく、医者になる頭脳は無かったしそれ以前に理系でもなかったが、、、、笑

 

司法解剖についてはドラマの中でも語られているが、日本の現状はかなりお寒い。

ほとんどの変死体は司法解剖されることなく荼毘に付される。

確か、首都圏・大都市圏の限られた区域以外は、疑わしい場合でもほとんど司法解剖されることはない、と何かで読んだことがある。

 

今はほとんどが火葬なので後に犯罪の可能性が出てきても、すでに証拠の遺体は無くなってしまっている。

もしかすると自殺や自然死ではなく、誰かに殺されたかもしれないのにそれを証明することができないのだ。

 

法医学はご遺体から真の死因を特定し、人間の尊厳を守る大切な学問であると、先の上野先生の本に書いてあった。

このドラマの主人公である監察医のミコト(石原さとみ)のように、現場の皆さんはそういった高い志で仕事に向き合っているのだと思う。

が、その数が絶望的に少ない、というのが日本の現状だ。

 

監察医がそんな刑事みたいなことするか、、、、みたいな話がいっぱいあり、突っ込みどころ満載なのだがそれはさておき、毎回違ったテイストのストーリーで視聴者を飽きさせない工夫がされており、楽しめる内容となっている。

特に初回から数話のつかみはばっちりで、中だるみもなく、8話以降は徐々に伏線を回収しつつ盛り上がりを見せていきラストの真相究明まで疾走していく。

法医学のドラマだと思って見てたら、最後は連続殺人鬼のドラマになっていたという驚きはあるが、、、笑

 

最初から物語のキーになる人物が死んだところからスタートするので、いわゆる「死ななくてよかった。。。」的展開はない。よって全体的に常に「死」がまとわりつき、ハードな内容の時もある。特に5話などはそこまでやるか。。。。というトラウマ的なラスト。

4話もなんとなく後味悪い。。。。

 

ドラマの舞台、脚本、ストーリー展開、すべてよし、に加えキャスティングも豪華だ。

 

UDIラボのメンバーに、松重豊、井浦新、窪田正孝、市川実日子。

この4人のキャスティングが、ドラマに厚みを持たせている。

 

それぞれが主役級で上手い人ばかり。

 

井浦新は、このドラマの中堂のような荒々しくも心優しい男でこそ、その魅力が発揮される。

でも、「殺意の道程」でのコミカルな役も捨てがたい。

 

ミコトの母親役に薬師丸ひろ子。

刑事役で、大倉孝二。出版社、ジャーナリストに池田鉄洋、北村有起哉。

ほか、竜星涼、吹越満、最終話に国広富之と要所にいい役者を据えている。

各話のゲストも同じく良い役者があてられており、安心して観られる。

たとえば8話で殺人の容疑をかけられた男の父親役に木場勝己。

ちょい役でこういう名バイプレイヤーを置いてくれるのは嬉しい。

 

石原さとみという女優さんは、これまであまりこれ、といったドラマ・映画の印象がなかった。

いわゆる代表作というものが思い当たらない。

NHKの朝ドラ「てるてる家族」に出ていた時はまだ15歳。子供だった。

彼女の居場所がなかっただけかもしれない。

それが、2018年のこのドラマ、そして2020年の「アンサング・シンデレラ」と、専門知識を持った働く女性、芯の強いまっすぐで誠実なキャラクターを演じたら、透明感ある彼女の魅力が発揮できる、ということがわかった。

2021年の「恋はDeepに」はまだ見ていないが、海洋学者の役らしい。

スペシャルティある職業でバリバリ働く女性、それが彼女の役者の世界での「立ち位置」なのかもしれない。30を過ぎて女優として脂が乗ってきたと思う。

 

最後に、主題歌はMATTの好きな楽曲の一つである米津玄師の「Lemon」だが、この曲はSONYのCMソングだと思ってたので、主題歌で流れて来た時びっくりした。

このドラマの世界観にぴったりで、マッチングも最高でした。