「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督作品である。
彼の映画の好きなところは、計算された絵づくり。
「ドライブ・・・」でも、印象的なカットや場面がたくさんあった。記憶に残るのだ。
この作品も、一つ一つの場面の絵面がすごくよくできていると感じた
2018年の作品、唐田えりかはそれまでまともに主演を張ったことのない、ほぼ無名女優だった。お相手はこの時点ではそこそこ上り調子だった東出昌大。
その後2020年に世間を騒がしてしまい、二人とも表舞台から姿を消したが、最近ともに少しずつ戻ってきているようだ。
東出昌大はこの作品でも見せたように、非常に器用で味のある役者さんだ。
このまま終わらせるのはもったいない。
一方、唐田えりかは2015年のソニー損保のCMで初めて見た時、いい表情をする子だと認識し注目していた。
この映画でもふわっとした外見に、強い芯を持ったヒロインという難しい役を上手く演じていた。セリフなどはまだまだも、光るものを持っていると思う。
共演陣は、渡辺大知、山下リオ、伊藤沙莉、瀬戸康史と実力者ぞろい。
田中美佐子も出ている(昔大好きだった・・・)。
唐田えりかはこの映画での朝子のキャラそのままに、その数年後に「魔性の女」呼ばわりをされてしまうのだが、女優さんとしてはもう一度やり直すチャンスを与えてあげてほしい。
この映画を撮った時は若干20歳、そしてまだ25歳なのだ。
朝子が大阪時代に付き合っていた麦は突然、朝子の目の前から姿を消す。
その後、東京に出てそこで知り合った亮平は、麦そっくりの顔をした男だった。
亮平と付き合い始める朝子だが、ある日麦がモデルとしてデビューしていることを知る。
そして麦が朝子の前に現れ俺と一緒に行こうと誘う。
亮平の目の前で朝子は追いすがる亮平を振りはらい、麦について行ってしまう・・・・・。
物語の終盤、揺れ動く女心が描かれる。なんとも切ない。
そしてラストシーン、東出昌大演じる亮平のもとに帰って来た朝子。
いったんは激しく罵倒し追い返す亮平。しかし結局は彼女を受け入れる。
二人で住むことにしていた家の2階ベランダから、外を流れる川を見て亮平は「汚い川だ」とつぶやく。一方、朝子は「とてもきれい」と返す。
以前、家を決める下見の時にベランダから眺める風景が好きだと言っていた朝子。
「とてもきれい」という言葉に、もう二度と亮平から離れずここで一緒に暮らす、という決意を込めたのだろう。
監督の絵作りと、俳優さんの好演が光る作品。心に残る映画だった。
伊藤沙莉もよかったけど、この作品に関しては山下リオが好演。
本当に彼女は魅力的な女優さんです。