坂元裕二脚本ドラマは、どれを観ても観終わった後に、このドラマが坂元脚本で一番だったな。。。と思わせる。

しかし、冷静になってみるとどれも甲乙つけがたく、どの作品が一番、という風に決められないことに気づくのだ。

 

彼の作品は情緒に流されない、でも決して冷徹に現実だけを描くことはしない。

どこか、人間や人間の営みを暖かく見つめる視点が感じられる。

不器用な人、社会からはじき出された人、それでも懸命に生きる人、彼がドラマで描く人々は、とても魅力的だ。それが坂元作品を好きな理由かもしれない。

 

「woman」は2013年のドラマ。

韓国時代に少しだけ見た記憶があるが、全話観ることができなかったのでほぼ初見だった。

 

満島ひかりは2011年に、気になる女優さんで書いて注目していた。

派手な動きや際立って何か訴えるようなタイプの女優さんではないが、佇まいというかいるだけで自己表現ができる、若いのに存在感のある女優さんと感じていた。

 

ドラマはタイトル通り「woman=女性」を中心に話が展開する。

womanであり、母親である女性たち、満島ひかり演じる小春、その母親で田中裕子演じる紗千、そして臼田あさ美や谷村美月といった面々が母親を演じていく。

 

「mother」「woman」「anone」は母性三部作ともいえる作品群だが、「woman」は中でも実の母娘の話が中心で、ほかの二作品とは少し設定が異なる。

それでも母親と娘の関わりの中で、娘、子を守ろうとする母親が持って生まれた本能を、ギリギリまで見つめるようとする視点は変わらない。

 

小栗旬演じる小春の夫の信の死が、このドラマの重要なキーとなっている。

その死の真実は実にいたたまれなく、辛く、悲しいものではあるが、「woman」たちがその死をどう受け入れ、死にどう向き合い、人生を生きていくかが様々な葛藤を越えて描かれる。

 

この作品で注目したのは、植杉家に居候することになる小春一家と植杉家の交流の中で、描かれる日常生活。

特に料理のシーンが丁寧に描かれて、生活感が感じられる。

実は家族、親子とはこういった炊事、料理、食卓の記憶というのが非常に大事なのだ。

共に生きる時間において、必ず訪れて毎日の生活の中で欠かせない時間。

それこそが、家族、親子の時間でありかけがえないものなのである。

 

二階堂ふみ演じる栞、鈴木梨央演じる小春の娘・望海の両女優さんの演技もドラマに厚みを持たせている。

ともに現在も活躍する二人だが、若いうちに良質の脚本とドラマ、俳優さんたちと仕事ができたのはよかったのではないだろうか。

 

小林薫や小栗旬、高橋一生といった男優陣ももちろんよかったが、やはり田中裕子と満島ひかりが、わだかまりを持ちながらも、母娘の絆を確かめ合いながら少しずつ認め合っていく過程が素晴らしく、二人の女優のお芝居を存分に堪能できた。

 

若き日の三浦貴大が、谷村美月の夫役で出ていた。

シュッとしたいい男(お母さんに目元、口元が似ているね)だが、今はなんかポッチャリしてしまい、別人。。。。時の流れを感じる。